「まだ話せない=わかっていない」ではありません|赤ちゃんは話す前から言葉を理解している

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この記事で分かること

「同じ月齢の子はもう話しているのに、うちの子はまだ…」と不安になること、ありますよね。でも安心してください。「話せない」ことは、「わかっていない」ことを意味しません。

研究では、赤ちゃんの言葉の理解は、話せるようになるよりずっと先に育つことがくり返し示されています。そして「わかっているのに言えない」背景には、口や舌を細かく動かす運動の発達が追いつくのを待っている、という面もあります。この記事では、その根拠になっている研究をやさしく紹介し、家庭で「理解が育っているサイン」に気づくコツまでまとめます。

「理解」は「発話」より先に育つ

言葉には、受容(じゅよう)=聞いて理解する力と、産出(さんしゅつ)=自分で話す力の2つの側面があります。そして、理解のほうが先に、しかも速く育ちます。

古くから知られる研究(Benedict, 1979)では、赤ちゃん8人を追ったところ、言葉の理解は生後9か月ごろから始まり、「50語わかる」段階に到達するのも、「50語話せる」段階よりずっと早かったと報告されています。理解が増えるスピードは、話せる言葉が増えるスピードの約2倍でした(出典:Benedict, 1979, Journal of Child Language。概要は ERIC で確認できます)。

これは、その後の大規模な発達調査(乳幼児の言葉を親が記録するMacArthur-Bates CDIという世界的な指標)でも同じで、赤ちゃんが「理解している言葉の数」は、「話せる言葉の数」を大きく上回ることがわかっています。目安として、言葉の理解は生後9か月ごろ、実際に話し始めるのは12〜13か月ごろから、とされます。

つまり、話す前の赤ちゃんの頭の中には、すでにたくさんの「わかる言葉」が蓄えられているのです。

なぜ「わかっているのに言えない」の?

では、理解しているのに、なぜすぐに話せないのでしょうか。理由の一つが、話すことの“運動”の難しさです。

言葉を発するには、唇・舌・あご・喉を、ミリ単位でタイミングよく協調させる必要があります。これは体の中でもとても高度な運動で、その運動をつかさどる力が育つのを待っている面があるのです。理解(頭でわかる)と、発話(口で言う)は別の発達で、後者は運動の成熟に引っぱられます。

これを間接的に示すのが、手の動きと言葉の関係です。手を動かす運動は、口まわりの運動より早く成熟すると考えられており、手話を母語とする子の研究では、最初の“サイン(手の言葉)”が、話し言葉の“最初の言葉”より少し早く現れる傾向が報告されています(Meier & Newport, 1990, Language)。※これは手話を第一言語とする子の話で、「ベビーサインをさせれば言葉が早くなる」という意味ではありません。あくまで「手は口より先に動かせる」という運動発達の裏づけとして紹介しています。

だからこそ、赤ちゃんは話せるようになる前に、指さし・身ぶりで「わかっていること・伝えたいこと」を表現します。指さしと言葉の関係は赤ちゃんの「指さし」と言葉の関係でも詳しく紹介しています。

家庭で気づける「理解しているサイン」

話せなくても、赤ちゃんは日々「わかっている」ことを示しています。こんな様子が見られたら、理解が育っているサインです。

  • 名前を呼ぶと、振り向く・反応する
  • 「バイバイ」と言うと手を振る、「パチパチ」で手をたたく
  • 「ちょうだい」で物を渡す、「ないない」で片づけようとする
  • 「わんわんどこ?」と聞くと、その方向を見る・指さす
  • いつもの絵本で、好きなページに反応する

これらは、言葉と意味が結びついている証拠。「まだ一語も話さない」時期でも、理解は着実に積み上がっています。

家庭でできること

理解が先に育つとわかると、関わり方もシンプルになります。「話させる」ことより、「わかる言葉の貯金」を増やすイメージです。

  • 話しかけ続ける:返事がなくても、実況中継のように言葉を添える。理解の貯金になります。
  • 身ぶり・指さしに応える:赤ちゃんの発信に言葉で返す。やりとりの大切さは赤ちゃんの言葉は「量より“やりとり”」もどうぞ。
  • 待つ:話しかけたら、返す番を待つ。急かさない。
  • 比べない・焦らない:発話の時期は個人差がとても大きい部分です。

気になるとき・相談の目安

発話がゆっくりでも、理解のサイン(呼びかけへの反応、指さし、身ぶりなど)が育っていれば、過度に心配しすぎなくて大丈夫なことが多いです。一方で、「名前を呼んでも反応が薄い」「目が合いにくい」「指さしや身ぶりも出ない」など理解・関わりの面が気になる場合は、発話の有無だけで判断せず、1歳半健診などの機会や、かかりつけ医・小児科、地域の子育て相談で相談してください。早めの相談は、その子に合った関わりを見つける助けになります。

よくある質問(FAQ)

Q. 1歳を過ぎても話しませんが、大丈夫でしょうか?
A. 発話の開始時期は個人差が大きいものです。呼びかけに反応する、指さしや身ぶりが出る、大人の言うことをある程度わかっている——といった理解のサインがあれば、まずは様子を見つつ関わりを続けて。気になるときは健診などで相談を。

Q. たくさん話しかけているのに反応が薄いです。
A. 反応の出方にも個人差があります。ただ「呼んでも振り向かない」などが続く場合は、聞こえの確認も含めて小児科で相談すると安心です。

Q. ベビーサインを教えると言葉が早くなりますか?
A. 「サインが言葉を早める」とは言い切れません(研究でも賛否があります)。ただ、身ぶりでのやりとりは親子のコミュニケーションを豊かにします。言葉のためというより、通じ合う手段の一つと捉えるとよいでしょう。

まとめ

赤ちゃんの言葉の理解は、話せるようになるより先に、しかも速く育ちます。「まだ話せない」のは「わかっていない」からではなく、口や舌の運動の発達が追いつくのを待っている面も大きいのです。だから、話せない時期こそ、話しかけ続け、身ぶりや指さしに応えることに意味があります。目の前の赤ちゃんは、あなたが思う以上に、ちゃんとわかっています。焦らず、日々のやりとりを重ねていきましょう。


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