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この記事の結論
「寝る前にスマホやテレビを見せると、寝つきが悪くなる気がする」——この感覚を、実際に赤ちゃんで確かめた研究が2024年に発表されました。1〜2歳の子ども105家庭を対象に、就寝前1時間の画面(スマホ・タブレット・テレビ)をやめて、絵本やパズルなど静かな遊びに置きかえたところ、眠りの質(眠っている時間の割合)がわずかに良くなったという結果です。
ただしこれは規模の小さい予備的な研究で、「劇的に効く」ものではありません。それでも、道具もお金もいらず、今夜から試せる方法として知っておく価値があります。この記事では、研究でわかったことと、家庭でできること、そして過信しないための注意点を、出典つきでまとめます。
今夜からできること(先にまとめ)
| いまの状況 | まず試すこと |
|---|---|
| 寝る前に動画を見せてから寝かしつけている | 就寝の1時間前で画面を切り上げ、絵本・パズルなど静かな遊びに切りかえる |
| 画面をやめると子どもがぐずる | いきなりゼロにせず、「寝る前の遊び箱」を用意して置きかえる |
| 効果が感じられない | 数日〜2週間ためす。眠りは個人差が大きいので他の生活リズムも合わせて見直す |
研究でわかったこと
イギリスのバークベック・ロンドン大学などの研究チームが、医学雑誌『JAMA Pediatrics』(2024年) に発表した研究です。対象は、寝る前の1時間に週3日以上・10分以上の画面時間がある1〜2歳(16〜30か月)の子ども。427家庭に声をかけ、条件に合った164家庭のうち105家庭を、くじ引きで次の3グループにランダムに分けて比べました(ランダムに分けて比べる=どちらが効いたかを公平に確かめるための方法です)。
- 画面をやめるグループ … 就寝前1時間の画面をやめ、代わりに「寝る前の遊び箱」(絵本・パズルなど)を使う
- 遊び箱だけのグループ … 同じ静かな遊びは用意するが、画面については何も言わない
- 今までどおりのグループ … 特に変えない
眠りは、体の動きから睡眠を記録する装置(アクチグラフ=腕時計型の睡眠計)で客観的に測りました。主な結果は次のとおりです。
- 無理なく続けられた:画面をやめる方法に取り組んだ家庭の94%が実行でき、105家庭中104家庭(99%)が最後まで参加しました。「寝る前の画面をやめる」は、多くの家庭で現実的にできる、ということです。
- 眠りの質が少し良くなった:眠っている時間の割合(睡眠効率)が、「遊び箱だけ」グループと比べて改善しました(効果の大きさは小〜中程度で、この研究のなかで最もはっきり差が出た項目)。夜中に目を覚ます回数や、昼寝の長さも減る傾向がありました。
- 注意力(集中の力)には、はっきりした差は出ませんでした。
3つのグループを比べると
「画面をやめる」以外の2グループとの違いを具体的に見ると、次のようになります。
| 比べた項目 | 画面をやめる vs 今までどおり | 画面をやめる vs 遊び箱だけ |
|---|---|---|
| 続けられたか | 94%が実行、99%が最後まで参加 | 同上 |
| 睡眠効率(眠れている時間の割合) | 改善する傾向(断定はできない範囲) | 小〜中程度の改善(最もはっきりした差) |
| 夜中に目を覚ます回数 | 減る傾向(断定はできない) | 減る傾向(断定はできない) |
| 昼寝の長さ | 短くなる傾向 | ほぼ差なし |
| 注意力(見る・集中する力の測定) | 差なし | 差なし |
| 自制心・がまんする力(親の評価) | データなし | 「遊び箱だけ」グループの方が良い評価(画面をやめるグループはやや低め) |
最後の「自制心・がまんする力」は意外な結果です。画面をやめたグループより、遊び箱だけ用意して画面には触れなかったグループの方が、親が答えた自制心・がまんする力の評価が良くなっていました。研究チームはこれを、画面をやめること自体の効果というより、「静かな遊びの時間を確保すること」自体が関係している可能性がある、と慎重に述べています。
研究チームの結論は、「就寝前の画面をやめることは無理なく実行でき、睡眠に対してわずかな良い効果がありそうだ。ただし本格的な確認にはさらに大きな研究が必要」というものです。小児科の一般的な推奨(寝る前は画面を控える)とも一致しています。
家庭でできること
研究で使われたやり方は、そのまま家庭で真似できます。ポイントは「やめる」ではなく「置きかえる」ことです。
- 就寝の1時間前で画面を切り上げる。時間を決めて「これでおしまい」を毎日同じにすると、子どもも見通しが立って切りかえやすくなります。
- 「寝る前の遊び箱」を用意する。絵本、簡単なパズル、型はめ、お絵かきなど、興奮しすぎない静かな遊びを箱にまとめておき、画面の代わりに出します。
- いきなりゼロにしない。ぐずりが強い子は、見せる時間を少しずつ早めに切り上げるところから。親のスマホも一緒にしまうと切りかえがスムーズです。
- 部屋を暗め・静かめに。眠りは画面だけで決まりません。就寝前は照明を落とし、毎日同じ流れ(お風呂→絵本→就寝)にすると寝つきが安定しやすくなります。
やりがちな失敗は、その場で「今日は何して遊ぶ?」と選ばせてしまうことです。子どもが選ぶのに時間がかかったり、結局もっと刺激の強い遊びを選んでしまったりして、切りかえがかえって長引きます。あらかじめ箱の中身を3〜4種類に絞っておき、「今日はこれね」と親が渡す形にすると、静かな流れを保ちやすくなります。
寝る前の遊び箱、何を入れる? タイプ別早見表
何を選べばいいか迷ったときの目安です。
| 遊びの種類 | 目安の対象月齢 | 価格帯の目安 | 選ぶポイント | 向いている子 |
|---|---|---|---|---|
| 絵本(読み聞かせ) | 0歳〜 | 1冊700〜1,500円、セットで2,000〜5,000円程度 | ページが厚く破れにくい厚紙絵本から | 座って話を聞くのが好きな子 |
| ジグソーパズル(幼児向け) | 1歳半〜3歳 | 1,000〜3,000円程度 | ピース数が少ないもの(2〜9ピース程度)から | 手を動かす遊びが好きで、じっとしているのが苦手な子 |
| 型はめパズル | 1歳〜 | 1,500〜3,000円程度 | 木製で角が丸く、誤飲しにくい大きさのもの | 「できた」の達成感があると集中しやすい子 |
| お絵かき・らくがき帳 | 1歳半〜 | 500〜1,500円程度 | クレヨンは口に入れても安全な成分表示のものを選ぶ | 手先を動かすのが好きな子、絵本に飽きた子 |
商品を選ぶときは、価格やデザインだけでなく、パッケージに書かれた対象月齢と、誤飲防止の観点(小さすぎるパーツがないか)を必ず確認してください。
知っておきたい注意点・研究の限界
役に立つ結果ですが、過信は禁物です。次の点をふまえて受け止めてください。
- 規模が小さい予備的な研究です。105家庭という少人数で、研究チーム自身も「本格的な確認にはもっと大きな研究が必要」と述べています。「必ず効く」と約束するものではありません。
- 効果は「わずか」です。とくに「今までどおり」グループと比べると、差がはっきりしない項目(統計的にゼロの可能性を否定しきれない項目)もありました。もっともはっきりしたのは「静かな遊びだけの家庭」と比べたときの睡眠効率でした。
- 注意力への効果は確認されませんでした。「画面をやめれば頭が良くなる・集中できるようになる」といった話ではありません。
- 「画面をやめること」自体が万能ではないようです。前述のとおり、自制心・がまんする力の親評価では、画面をやめたグループより遊び箱だけのグループの方が良い結果でした。効いているのは「画面を取り上げること」よりも「静かな遊びの時間そのもの」かもしれません。
- 対象は1〜2歳です。月齢や家庭の事情で当てはまり方は変わります。眠りには体質・生活リズム・体調など多くの要因が関わり、個人差が大きいものです。
- 寝つきや夜泣きが極端で困る、いびきや無呼吸が気になる、発達の心配があるなど気になる症状があるときは、自己判断せず、かかりつけ医や小児科に相談してください。
「寝る前の画面を減らすと、少し眠りが整うかもしれない。しかも無理なく試せる」——このくらいの温度感で、生活に取り入れてみるのがちょうどよい距離感です。
よくある質問(FAQ)
Q. どのくらい前に画面をやめればいいですか?
研究では「就寝の1時間前」で区切っていました。まずは1時間前を目安に、難しければ30分前からでも構いません。毎日同じ時間にすることが大切です。
Q. テレビもスマホもタブレットも同じですか?
この研究では、寝る前の「画面時間」としてまとめて扱っていました。種類よりも「就寝前に見るかどうか」に注目した研究です。
Q. やめると大泣きします。どうすれば?
いきなりゼロにせず、「寝る前の遊び箱」に置きかえるのが研究のやり方でした。絵本やパズルなど、子どもが好きで興奮しすぎない遊びを用意して、画面の代わりに差し出してみてください。
Q. これで夜泣きは治りますか?
夜泣きが必ず治るという研究ではありません。夜中に目を覚ます回数が減る傾向はありましたが、あくまで「わずかな改善」です。夜泣きの背景は月齢や体調などさまざまなので、続く場合はほかの要因も見直しましょう。
Q. いつまで続ければいいですか?
研究では、この方法を7週間続けてもらったうえで睡眠の変化を確認しています。数日だけの単発の対策というより、生活習慣として続けることを前提にした研究なので、「今夜だけ」ではなく数週間は続けてみるのがおすすめです。
Q. 上の子がいる場合、きょうだいそろって画面をやめた方がいいですか?
この研究は子ども一人ひとりを対象にしたもので、きょうだい間のルールまでは検証していません。ただ、上の子が寝る前に動画を見ていると下の子も引きずられやすいため、家族全体で「寝る前1時間は画面なし」とそろえている家庭は多いです。
Q. 3歳以上の子にも当てはまりますか?
研究の対象は16〜30か月(1〜2歳)の子どもで、3歳以上での効果は確認されていません。年齢が上がると生活リズムや自己コントロールの発達も変わるため、そのまま当てはまるとは限りませんが、「寝る前は画面を控える」という一般的な推奨は年齢を問わず広く言われています。
出典
- Pickard H ほか(2024)「Toddler Screen Use Before Bed and Its Effect on Sleep and Attention: A Randomized Clinical Trial(就寝前のスクリーン使用が幼児の睡眠と注意に与える影響:ランダム化比較試験)」JAMA Pediatrics, 178(12):1270-1279. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39432278/
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