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この記事の結論
「スクリーンタイムを減らさなきゃ」と思うと、つい画面を見る時間そのものを制限することから考えがちです。しかし、山梨大学の研究チームが幼稚園児の家庭を調べたところ、スクリーンタイムの長さと特に強く関連していたのは「何時に寝て、寝る前の1時間をどう過ごすか」でした(若本ほか, 2024)。
具体的には、就寝・起床が遅い子ほど寝る前にスクリーンを見ており、それがスクリーンタイム全体の長さにつながっていたという関連が見つかっています。さらに、寝る前にスクリーンを見ている子は外遊びの時間も少なく、スクリーンタイムが長いほど室内遊び(おもちゃ遊び)も減っていました。この記事では、この調査でわかったことと、家庭で今日から見直せるポイント、そして小規模な調査ゆえの限界までまとめます。
今の困りごと別、まず見直すこと
| いまの状況 | まず見直すこと |
|---|---|
| スクリーンタイムをどう減らせばいいかわからない | まず「寝る時間」から。就寝が早まるとスクリーンタイムも短くなる傾向 |
| 寝る前に動画やゲームをやめられない | 就寝1時間前の画面をやめ、家族の会話や絵本の時間に置きかえる |
| 外遊びの時間が少ない気がする | 保護者が子どもと一緒に遊ぶ時間を増やす(外遊び・室内遊びの両方が増える関連あり) |
| 何時に寝かせればいいかわからない | 目安は21時台までの就寝。11時間以上の睡眠を確保しやすくなる |
研究でわかったこと
この研究は、山梨大学教育学部附属幼稚園の養護教諭と大学教員による共同研究です(若本純子ほか, 2024, 『教育実践学研究』第29号)。2023年7月、附属幼稚園に通う3〜5歳の園児69人の保護者(3歳児22人・4歳児22人・5歳児25人)を対象に、生活習慣・遊び・メディア利用についてのWebアンケートを実施しました(回収率98.6%)。
睡眠が11時間を超えると、体を動かす時間も増える
まず、子どもの睡眠時間(昼寝を除く)で3つのグループに分けて比較しました。
- 10時間未満(22人、31.9%)
- 10時間台(39人、56.5%)
- 11時間以上(8人、11.6%)
その結果、11時間以上眠っている子は、他の2グループより日中の身体活動の時間が有意に(=偶然とは考えにくいレベルで)長いことがわかりました。一方で、スクリーンタイムの長さそのものには、この3グループの間で統計的な差は見られませんでした。つまり、「スクリーンタイムが長いから体を動かさない」という単純な話ではなく、睡眠がしっかり取れている子ほど、日中活発に体を動かしているという関係のほうがはっきり出ていたのです。
なお、3〜5歳に必要な睡眠時間の目安として、小児科領域の専門書(『ネルソン小児科学』)では11時間以上が挙げられており、この調査結果とも符合します。
21時台までの就寝が、11時間睡眠のカギ
では、11時間以上の睡眠をとるにはどうすればいいのでしょうか。研究チームが平日・休日の就寝時間を比べたところ、睡眠時間が短いグループほど就寝時間が有意に遅いという関連が出ました。就寝時間の分布を見ると、11時間以上眠れているグループと、そうでないグループを分けていたのは、平日・休日を問わず「22時台に寝る子がいるかどうか」でした。11時間以上眠れているグループには22時台就寝の子がおらず、全員が21時台までに就寝していました。
起床時間は登園時間などの都合で調整しにくい一方、就寝時間は家庭の生活習慣で変えられる部分です。「21時台までに寝かせる」を目安にすることが、まず現実的な一歩になりそうです。
「寝る前のスクリーン」が、スクリーンタイム全体を押し上げている
この調査でとくに興味深いのは、「就寝1時間前の過ごし方」に注目した分析です。園児の44.9%が、寝る1時間前にテレビ・動画・ゲームなどの画面を見て過ごしていました(「家族との会話」75.4%、「絵本の読み聞かせ」56.5%に次ぐ多さです)。
統計的なモデル(パス解析)で関連を整理すると、次のようなつながりが見えてきました。
- 就寝・起床時間が遅い子ほど、寝る1時間前にスクリーンを見ている
- 寝る前にスクリーンを見ていると、1日のスクリーンタイム全体が長くなる
- スクリーンタイムが長いと、おもちゃを使った室内遊びの時間が減る(外遊びとは直接の関連なし)
- ただし、寝る前にスクリーンを見ている子は、外遊びの時間も有意に少ない(こちらは別のルートで関連)
つまり、「スクリーンタイムを何時間以内にするか」を単独で管理するよりも、「寝る前の1時間をどう過ごすか」に手をつけるほうが、結果的にスクリーンタイム全体にも効いてくる可能性がある、ということです。
親が一緒に遊ぶと、スクリーンタイムが減り、外遊び・室内遊びが増える
もう一つの発見が、保護者が子どもと一緒に遊ぶ頻度の影響です。分析では、「子どもと遊ぶ」頻度が高い家庭ほど、スクリーンタイムが短く、外遊び・室内遊びの両方が多いという関連が見られました。また、「家族で会話をしながら食事をする」頻度が高い家庭ほど、寝る前にスクリーンを見る割合が低いという関連も出ています。
肥満度・欠席率との関連
研究チームはさらに、幼稚園の記録から算出した肥満度と1学期の欠席率についても調べています。肥満度は「睡眠の遅さ→寝る前のスクリーン視聴→スクリーンタイムの長さ」という一連の流れと関連しており、家庭での食生活のあり方も直接関わっていました。欠席率については、平日と休日で就寝時間の差が大きい(生活リズムが不規則な)子ほど欠席率が高いという関連が見られました。
家庭でできること
研究チームが保健教育の提案としてまとめている内容も踏まえ、実践しやすい順に整理します。
- 就寝時間を21時台までに寄せる。起床時間より変えやすいのが就寝時間です。無理なら「今より15分早める」からで構いません。
- 寝る1時間前はスクリーンをやめ、絵本や家族の会話に置きかえる。この調査でも「家族との会話」「絵本の読み聞かせ」はすでに多くの家庭で行われている習慣です。「長い針が6になったらおしまいね」のように終わる時刻を先に伝え、タイマーの音などで区切りをはっきりさせておくと、切り上げるときのぐずりが減りやすくなります。
- 平日・休日で就寝時間をそろえる。差が大きいほど欠席率との関連が見られたため、休日だけ夜更かしになりがちな家庭は注意が必要です。
- 保護者が子どもと一緒に遊ぶ時間をつくる。外遊びでも室内遊びでもよく、「一緒に遊ぶ」こと自体がスクリーンタイムを減らす方向に関連していました。
- 食事の時間を会話のある時間にする。家族で会話しながら食事をする頻度が高い家庭ほど、寝る前のスクリーン視聴が少ない傾向がありました。
忙しい日でも「一緒に遊ぶ」を増やす工夫
「一緒に遊ぶ時間をつくる」と言われても、家事や仕事の合間にまとまった時間を取るのは難しいものです。使える時間の長さで区切って考えると、取り入れやすくなります。
| 使える時間の目安 | できること | ポイント |
|---|---|---|
| 5分(家事の合間) | くすぐり遊び、かくれんぼ、絵本1冊の読み聞かせ | 手を止めるのは短時間でよい。「ながら」の声かけより、数分でも手を止めて向き合う方が子どもの満足度は高くなりやすい |
| 15分(夕食の準備前後) | 折り紙、ブロック、お絵かき | 先にタイマーをセットして「ここまで」を共有しておくと、次の家事への移行もスムーズ |
| 30分以上(休日など) | 公園・散歩などの外遊び | この調査でも、保護者と一緒に遊ぶ頻度が高い家庭ほど外遊び・室内遊びの両方が多いという関連が見られています |
なお、世界保健機関(WHO)のガイドライン(2019年)では、3〜4歳の座って画面を見る時間は1日1時間以内、少ないほど良いとされ、質の高い睡眠を10〜13時間(昼寝を含む)確保することが推奨されています。今回の研究結果は、この「睡眠を軸に生活を整える」という考え方を、日本の幼稚園児のデータで裏づけるものといえます。
海外でも同じ方向の見直しが進んでいます。米国小児科学会(AAP、アメリカの小児科医の専門団体)は2026年に発表したメディア利用の新しい指針で、視聴時間の上限だけを管理するより、見ている内容の質や保護者が一緒に見ること(共視聴)を重視する考え方に転換しました。そのうえで、寝室・食事の時間とあわせて「就寝前の1時間は画面をオフにする」ことを、家庭で取り組みやすい目安の一つとして挙げています(American Academy of Pediatrics, 2026)。時間だけでなく寝る前の使い方に注目するという方向性は、今回の山梨大学の調査結果とも一致しています。
知っておきたい注意点・研究の限界
役立つ知見ですが、次の点をふまえて受け止めてください。
- 1つの幼稚園・69人という小規模な調査です。全国の幼児にそのまま当てはまるとは限りません。
- ある1時点のアンケートを分析した研究で、原因と結果の順番を確かめる追跡調査ではありません。「睡眠を整えればスクリーンタイムが減る」と断定はできず、「関連がある」という段階の知見です。
- 保護者の回答による自己申告のため、実際の時間と多少のズレがある可能性があります。
- 家庭にはそれぞれ事情があります。仕事や下の子のお世話などで21時台の就寝が難しい日があっても、それ自体を責める必要はありません。できるところから1つで十分です。
- 睡眠の極端な乱れ、体重の増え方が気になる、生活リズムを整えても長期間改善しないといった場合は、自己判断せずかかりつけ医や幼稚園・保育園の先生、乳幼児健診で相談してください。
出典
若本純子・望月志保美・望月なぎ沙(2024)「子どものスクリーンタイムと引き換えに失われるものは何か-幼児,中学生の心身の健康との関連-」『教育実践学研究』29号, pp.131-150, 山梨大学教育学部附属教育実践総合センター. https://yamanashi.repo.nii.ac.jp/records/2000168
World Health Organization (2019) Guidelines on physical activity, sedentary behaviour and sleep for children under 5 years of age. https://iris.who.int/handle/10665/311664
American Academy of Pediatrics (2026) Helping Kids Thrive in a Digital World: AAP Policy Explained. HealthyChildren.org. https://www.healthychildren.org/English/family-life/Media/Pages/helping-kids-thrive-in-a-digital-world-AAP-policy-explained.aspx
よくある質問(FAQ)
Q. スクリーンタイムは1日何時間までにすればいいですか?
A. WHOのガイドラインでは、3〜4歳の座っての画面視聴は1日1時間以内、少ないほど良いとされています。ただし今回の研究では、時間の上限を守ること以上に「寝る前に見ないこと」「睡眠時間を確保すること」がスクリーンタイム全体にも関連していました。
Q. うちは共働きで、家事のあいだテレビに頼っています。やめるべきですか?
A. この調査でも、約半数の家庭が寝る前を含め画面を活用しており、珍しいことではありません。すべてをやめる必要はなく、まずは「寝る1時間前だけ」など範囲を絞って見直すのが現実的です。
Q. 何歳ごろまでこの内容は当てはまりますか?
A. 調査対象は3〜5歳(年少〜年長)の幼稚園児です。1〜2歳の睡眠とスクリーンの関係については、寝る前のスマホ・テレビと赤ちゃんの睡眠の関係で別の研究を紹介しています。
Q. すでに21時台に寝かせていますが、スクリーンタイムが長い気がします。
A. 就寝時間だけでなく「寝る前1時間の過ごし方」も関連していました。就寝時間が早くても、その1時間に画面を見ていればスクリーンタイムは伸びやすくなります。両方をあわせて見直すとよいでしょう。
Q. 外遊びを増やすには何が一番効果的でしたか?
A. この調査でもっともはっきり関連していたのは「保護者が子どもと一緒に遊ぶ頻度」でした。特別な道具や時間がなくても、一緒に遊ぶ時間そのものが外遊び・室内遊びの両方を増やす方向に関連しています。
Q. 時間を減らす以外に、見せる内容自体も気にした方がいいですか?
A. はい。今回の調査は主に「視聴時間の長さ」に注目したものですが、米国小児科学会(AAP)は2026年の指針で、時間の上限だけでなく内容の質や、保護者が一緒に見ること(共視聴)も重視する方向に見直しています。同じ時間見るのであれば、一人で受け身に眺めるより、内容について親子で話しながら見る方が望ましいとされています。
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