夜驚症の子を起こしていい?してはいけない対応と、いつまで続くかの目安

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この記事で分かること

夜驚症(やきょうしょう)の子を起こしていいのか——結論から言うと、基本的には起こさず、安全を確保しながら静かに見守るのが正解です。 無理に起こそうとすると、なかなか目を覚まさず余計に混乱させてしまったり、本人が驚いて暴れたりすることがあります。

夜驚症とは、深い眠りの途中で突然、大声で泣き叫んだり、目を開けたままパニックのような様子を見せたりする現象です。声をかけても反応がなく、翌朝になると本人はまったく覚えていません。見ている親のほうがつらい思いをしますが、多くの場合は成長とともに自然になくなっていきます。

この記事では、よく似た夜泣き・悪夢との違い、何歳ごろに多くいつまで続くか、起きやすくなるきっかけ、今夜からできる対応、そして病院に相談したほうがよいサインまでをまとめます。

いまの状況 まず試すこと
目を開けて泣き叫んでいるが、呼びかけに反応しない 無理に起こさず、そばで安全を見守る
毎晩ほぼ同じ時間に起きる 「スケジュール覚醒法」を試す(後述)
ベッドから落ちそう・歩き回っている 声はかけず、体だけそっと支えて安全な場所に誘導する
症状が週に何度もある、けがをしそう 一度小児科・睡眠外来に相談する
いびきや呼吸が止まるような様子もある 夜驚症より先に、いびき・無呼吸について相談する

夜驚症とはどんな状態か

夜驚症は、眠りが浅くなる時間帯ではなく、眠り始めてから1〜3時間ほどの、いちばん深い眠りの最中に起こります。脳の一部だけが中途半端に目覚めてしまうために起こると考えられており、医学的には「睡眠時遊行症(夢遊病)」などと同じノンレム睡眠からの覚醒障害(パラソムニア)というグループに分類されます。パラソムニアとは、眠っている最中に体の一部だけが目覚めたような状態になり、異常な行動や感覚が現れる現象の総称です。

典型的な様子は次のようなものです。

  • 突然、大声で泣き叫ぶ、悲鳴を上げる
  • 目を開けているが、焦点が合っていない
  • 心臓がドキドキして呼吸が速く、汗をかいている
  • 抱きしめても振り払う、呼びかけに反応しない
  • 数分から10分程度で自然に治まり、そのまま眠りに戻る
  • 翌朝、本人はまったく覚えていない

夜泣き・悪夢とはどう違うか

見た目が似ているため混同されやすいですが、起こる仕組みも対応の仕方も別物です。

夜驚症 悪夢(怖い夢) 一般的な夜泣き
起こる時間帯 就寝から1〜3時間後の深い眠り 明け方に多い、浅い眠り(レム睡眠) 夜間を通じて起こりうる
本人の様子 目を開けて泣き叫ぶ、反応が乏しい 完全に目を覚まし、怖がって助けを求める 目を覚まして泣く
翌朝の記憶 ほとんど残らない 覚えていることが多い 該当なし(乳児期の生理的な泣き)
有効な対応 起こさず安全を見守る 抱きしめて安心させ、必要なら話を聞く 抱っこ・授乳・声かけであやす

悪夢は本人が目を覚まして助けを求めてくるため、抱きしめて安心させることが効果的です。一方、夜驚症は本人がまだ深い眠りの中にいるため、起こそうとすること自体がうまくいかず、かえって長引かせることがあります。

何歳ごろに多く、いつまで続くか

夜驚症は1歳を過ぎたころから見られ始め、3歳から7歳ごろの幼児期に最も多いとされています。海外の調査では、子ども全体のおよそ3〜6%程度に見られると報告されており、決してまれな現象ではありません(数値は調査によって幅があります)。

多くの場合、脳の睡眠の仕組みが発達していく思春期前後までに自然に治まります。毎晩必ず起こるわけではなく、数週間に一度、あるいは数か月に一度という子も珍しくありません。頻度や程度に個人差が大きいのも特徴です。

家族に夜驚症や夢遊病の経験がある場合、子どもにも出やすい傾向があることが古くから知られています。一卵性双生児での研究では、片方に夜驚症があるともう片方にも見られる割合が非常に高く、二卵性双生児より明らかに高いことが報告されており、体質的な要因が関わっていると考えられています(Kales et al., 1980)。

起きやすくなるきっかけ

夜驚症そのものは体質による部分が大きいものですが、次のような状態が続くと起こりやすくなるといわれています。

  • 睡眠不足:昼寝を切り上げすぎた、就寝時間が遅い日が続いた
  • 生活リズムの乱れ:旅行や帰省、生活時間がいつもと違う
  • 発熱・体調不良:熱があるときに増えることがある
  • 環境の変化:引っ越し、進級・入園、きょうだいの誕生などの緊張
  • 膀胱がいっぱいの状態:寝る前の水分の取りすぎ

特に睡眠不足はもっとも影響しやすいきっかけとされています。「最近よく起きているな」と感じたら、まず就寝時間と昼寝の長さを見直すのが手っ取り早い対策です。

起こしていい?夜驚症のときにしてほしくない対応

ここが親にとっていちばん迷う部分です。目の前で泣き叫んでいる我が子を見ると、つい体を揺すって起こしたくなりますが、次の対応は避けたほうがよいとされています。

  • 強く揺さぶって起こそうとする:本人はまだ深い眠りの中にいるため、なかなか目覚めず、無理に起こすと混乱して余計に暴れることがあります
  • 大声で名前を呼び続ける:反応がないことに焦って声を荒げても、状況が変わるわけではありません
  • 抱きしめて押さえつける:安全のために体を支えるのは必要ですが、強く抱え込むと嫌がって暴れることがあります

代わりに、そばに寄り添い、けがをしないように周囲の安全だけを確保して、自然に治まるのを待つのが基本の対応です。ベッドから落ちそうなときや歩き回っているときは、声をかけずに体だけをそっと支えて安全な場所へ誘導します。多くは数分で落ち着き、そのまま何もなかったかのように眠りに戻ります。

予防のためにできること

夜驚症を根本からなくす方法は確立されていませんが、起こりにくくする工夫はあります。

  1. 睡眠時間を十分に確保する:年齢に応じた睡眠時間を意識し、特に昼寝がなくなる時期は夜の就寝時間を早めに調整する
  2. 就寝前のルーティンを一定にする:お風呂、絵本、部屋を暗くする、というように毎晩同じ流れにすると寝つきが安定します
  3. 就寝前の刺激を減らす:興奮するような遊びや強い光の画面は寝る1時間前までに切り上げる
  4. 生活リズムをできるだけ崩さない:休日や旅行中も、起きる時間・寝る時間の大きなズレを避ける

寝かしつけそのものに悩んでいる場合は、夜泣きと寝かしつけのコツ寝る前のスクリーンと睡眠もあわせて参考にしてください。

毎晩同じ時間に起こるとき:スケジュール覚醒法

「うちの子はいつも寝てから2時間後くらいに起きる」というように、発生する時間がほぼ決まっている場合は、「スケジュール覚醒法」と呼ばれるやり方が有効なことがあります。

やり方はシンプルです。まず数日間、何時ごろに夜驚症が起こるかを記録します。次に、そのいつもの発生時刻の15〜30分ほど前に、子どもをそっと起こして、少し反応があることを確認したらまた寝かせる、というのを1〜2週間ほど続けます。深い眠りに入りきる前に一度浅い眠りを挟むことで、覚醒が中途半端に起こる仕組みそのものを崩す狙いがあるとされ、小児の睡眠外来でも紹介される方法です(Lask, 1988ほか)。

毎晩ぴったり同じ時刻とは限らないため、うまくいかないこともあります。数週間試しても改善しない場合は、次に説明する受診の目安を参考にしてください。

受診の目安

夜驚症の多くは治療の必要がなく、成長とともに落ち着いていきます。ただし、次のような場合は一度小児科や睡眠を専門にする外来に相談してください。

  • 週に何度も繰り返す、あるいは一晩に複数回起こる
  • 本人がけがをしそうなほど激しく動く(ベッドから落ちる、物にぶつかるなど)
  • 日中にも意識がぼんやりする、ぐったりしている様子がある
  • いびきが大きい、呼吸が止まっているように見えるなど、睡眠時無呼吸を疑う様子がある。無呼吸があると眠りが浅くなりやすく、それが夜驚症を誘発していることがあり、扁桃腺の治療などで夜驚症が改善するケースも報告されています
  • 手足を規則的にガクガクさせる、毎回まったく同じ動きを繰り返す、夜以外の時間にも似た発作が起こる——このような場合はてんかんなど別の病気の可能性もあるため、自己判断せず受診してください
  • 小学校高学年以降になっても頻繁に続く、あるいは大人になってから初めて出てきた

気になる症状があるときは、様子を見すぎず、かかりつけの小児科に相談することをおすすめします。

よくある質問(FAQ)

Q1. 夜驚症のあと、朝に「昨日大変だったね」と伝えてもいいですか。
A. 本人はほとんど覚えていないため、伝えても戸惑わせるだけのことが多いです。よほど気にしている様子がなければ、あえて詳しく話す必要はありません。

Q2. 保育園のお昼寝でも夜驚症は起こりますか。
A. 起こることがあります。深い眠りに入っていれば時間帯を問わず起こりうる現象なので、昼寝中に同じような様子が見られても、夜間と同じ対応で構いません。

Q3. 夜驚症と熱性けいれんの違いがわかりません。
A. 熱性けいれんは発熱を伴い、体が硬直したり手足がガクガクしたりするのが特徴で、意識の状態も違います。発熱があるとき、または痙攣のような規則的な動きが見られるときは、夜驚症と決めつけず必ず受診してください。

Q4. きょうだいで夜驚症が出た子と出ない子がいます。なぜですか。
A. 体質的な要因が関わっているとされていますが、同じ家庭のきょうだいでも出やすさには差があります。原因がすべて解明されているわけではないため、「出た子の育て方が悪かった」という話ではありません。

Q5. 動画やスマホの光が原因になりますか。
A. 就寝前の強い光や興奮する内容の視聴は寝つきを浅くし、間接的なきっかけになりうると考えられています。ただし直接の原因と断定されているわけではなく、心当たりがあれば就寝1時間前までに切り上げる、という程度の対策で十分です。

まとめ

夜驚症は、深い眠りの途中で脳の一部だけが中途半端に目覚めてしまうことで起こる現象で、起こそうとせず、安全を確保しながら静かに見守るのが基本の対応です。3〜7歳ごろの幼児期に多く、多くは成長とともに自然に治まっていきます。睡眠不足や生活リズムの乱れがきっかけになりやすいため、まずは就寝時間と就寝前の過ごし方を見直すことから始めてみてください。頻度が多い、けがの心配がある、いびきや無呼吸を伴う——こうしたサインがあるときは、一人で抱え込まず小児科に相談しましょう。


主な出典
– Kales A, Soldatos CR, Caldwell AB, et al. (1980) Hereditary factors in sleepwalking and night terrors. British Journal of Psychiatry 137:111-118.
– Lask B (1988) Novel and non-toxic treatment for night terrors. British Medical Journal 297(6648):592.
– Petit D, Pennestri MH, Paquet J, et al. (2015) Childhood sleepwalking and sleep terrors: a longitudinal study of prevalence and familial aggregation. JAMA Pediatrics 169(7):653-658.


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