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この記事で分かること
1歳で歩かないことは、それだけでは遅れではありません。 国の最新調査では、生後1年0〜1か月の時点でひとり歩きができると回答されたのは47.9%。つまり1歳の誕生日に歩いている子は、およそ半分です。
見るべきなのは月齢ではなく、次の2つです。
- つかまり立ち・伝い歩きまで進んでいるか(歩く直前の段階に来ているか)
- 左右を同じように使えているか(片脚だけ突っ張る、片側しか使わないといったことがないか)
この2つに問題がなければ、1歳を数か月過ぎてからの一歩でも、多くの場合は個性の範囲です。この記事では、ひとり歩きの時期の目安、歩き出すまでに通る5つの段階、歩き始めの早さがその後に影響するのかという研究、そして相談を考える目安と家庭でできることを整理します。ひとつ前の段階が気になる方ははいはいをしないでつかまり立ちもあわせてどうぞ。
1歳で歩かないのは遅い?時期の目安
こども家庭庁「令和5年乳幼児身体発育調査」(2023年9月実施・2024年12月公表)では、「ひとり歩き」ができると回答されたのは、生後1年4〜5か月未満で90%以上とされています。月齢ごとの割合は次のとおりです。
| 月齢 | ひとり歩きができる割合 |
|---|---|
| 生後11〜12か月未満 | 30.9% |
| 1歳0〜1か月未満 | 47.9% |
| 1歳1〜2か月未満 | 55.3% |
| 1歳2〜3か月未満 | 83.0% |
| 1歳3〜4か月未満 | 88.4% |
| 1歳4〜5か月未満 | 96.9% |
「1歳になったら歩く」というイメージは根強いのですが、数字で見ると1歳ちょうどはまだ半々の時期です。しかも1歳1〜2か月から2〜3か月にかけて55.3%→83.0%と一気に増えており、この1か月ほどの間に歩き出す子がとても多いことが分かります。1歳を過ぎて数週間歩かないのは、この山の手前にいるだけ、ということが少なくありません。
さらに補足すると、こども家庭庁の資料では、90%以上ができると回答された月齢は前回の平成22年調査と比べて「ひとり歩き」で高くなっている、つまり以前よりゆっくりになっていると報告されています。うちの子だけが遅い、という話ではないわけです。
海外の目安も同じ方向に動いています。アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は2022年に発達の目安リストを改訂し、「支えなしで歩く」を12か月から18か月の項目へ移しました(CDC「Milestones by 18 Months」)。これは「歩くのが遅くなった」という意味ではなく、目安の基準を「半数ができる月齢」から「75%ができる月齢」に変えたためです。つまり12か月は、もともと半数の子ができる時期にすぎなかったということになります。
歩き出す前に通る5つの段階
歩くかどうかは0か1かではなく、階段のように進みます。今どこにいるかが分かると、見通しが立ちます。
| 段階 | 様子 | よく見られる時期の目安 |
|---|---|---|
| ①つかまり立ち | 家具などにつかまって自分で立ち上がる | 生後11〜12か月未満で9割 |
| ②伝い歩き | つかまったまま横に足を出して移動する | つかまり立ちの1〜2か月後が多い |
| ③手放し立ち | 支えなしで数秒立っていられる | 数日で次へ進む子から数か月かかる子まで |
| ④最初の一歩 | 数歩進んで、しりもちをつく | 1歳前後〜1歳3か月ごろ |
| ⑤歩行の安定 | 転ばずに続けて歩ける | 一歩が出てから1〜3か月ほど |
つまずきやすいのは③です。体を支える力より先に「怖さ」がブレーキになる時期で、伝い歩きは達者なのに手を離すと座り込む、という子はとても多くいます。ここにいるなら、待っていい段階です。
歩き方にも段階があります。小児科医が健診で見ているのは、腕の位置です(小児科オンラインジャーナル)。
- ハイガード:両腕を肩より高く上げてバランスを取る歩き方。1歳ごろの歩き始めに見られます
- ミドルガード:腕が胸の高さあたりに下りてくる。1歳2〜3か月ごろ
- ノーガード:腕が自然に下り、振って歩ける。1歳6か月以降
歩き始めの「バンザイ歩き」は不安定なのではなく、その時期に必要な歩き方です。腕が下りてくれば、それだけ体幹が安定してきた合図と考えられます。
早産で生まれた赤ちゃんは修正月齢で考えます。 修正月齢とは、出産予定日を基準に数え直した月齢のこと。2か月早く生まれた子なら、1歳2か月でも修正月齢は1歳です。
歩き始めがゆっくりになりやすい要因
原因が特定できることはまれで、多くは複数の要素が重なっています。どれも「そうだから遅れている」と決めつけられるものではありませんが、思い当たると気持ちが少し軽くなるはずです。
- 移動手段がすでに足りている:はいはいやずりばいが速い子は、立つ必要を感じにくいことがあります
- 慎重な気質:転ぶことを嫌がる子は、確実に立てるまで手を離しません
- 体格:体重が重めの子は、支えるバランスを取るのに時間がかかる場合があります
- おしりで移動する(シャフリング):座ったままおしりで進む子はシャフリングベビーと呼ばれ、歩き始めが1歳半前後と遅めになることが多いとされます。その後ふつうに歩けるようになる子が大半ですが、健診では伝えておきたい特徴です。詳しくははいはいをしないでつかまり立ちで扱っています
- 床で動く時間の長さ:抱っこ、ベビーカー、バウンサー、歩行器で過ごす時間が長いと、自分で立ち上がる練習の機会は単純に減ります
最後の項目だけは、家庭で見直せる部分です。ただし「抱っこが多いから歩かない」という因果関係が証明されているわけではありません。床で遊ぶ時間を少し増やす、くらいの受け止め方で十分です。
歩き始めの早さは、その後に影響する?
「早く歩いた子は運動神経がいい」とよく言われますが、研究の結果はそうなっていません。
スイスで行われた長期追跡研究(Jenni ら、2013年)では、健康に発達した子どもの歩き始めは生後10.5〜16.0か月と幅があり、その月齢と7〜18歳時点の運動能力・知能検査の結果との間に、意味のある関係は見られませんでした。2021年に発表された就学前の子どもを対象とした研究でも、歩き始めの月齢は、その後の運動・認知の力をほとんど予測しないという結果が報告されています(BMC Pediatrics, 2021)。
これらは健康に発達している子どもを対象とした研究で、病気による遅れまで「関係ない」と言っているわけではありません。それでも、通常の範囲でのんびり歩き出した子について、将来を心配する根拠は乏しいと言えます。1か月早いか遅いかの差は、数年後にはほとんど分からなくなります。
相談を考える目安
はっきりした目安があります。1歳6か月になっても支えなしで歩かない場合は、健診を待たずに小児科で相談を、というものです。この時期になると、筋肉・神経の病気や、股関節などの整形外科的な問題が背景にないかを確認する意味が出てきます(前掲・小児科オンラインジャーナル)。1歳6か月児健診でも、歩行は必ず確認される項目です。
それより前でも、次のような様子があるときは早めに相談してください。
- できていたことができなくなった(伝い歩きしていたのにしなくなった、など)
- 左右差がある:片脚だけ突っ張る、片側の手足をあまり使わない
- 立たせても脚に体重をかけようとしない、体がふにゃっとして支えられない
- 股関節が気になる:脚の開きが悪い、脚の長さやももの皮膚のしわが左右で違う。これは発育性股関節形成不全(生まれつき、または育つ過程で股関節がはずれやすくなる状態)を確認するサインとして、乳児健診でも見られる項目です
- 歩き始めても、つま先立ちのままでかかとが床につかない状態が続く
- 運動以外も気になる:目が合いにくい、名前を呼んでも反応が薄い、指さしをしない、言葉が出ない
これらは病気を示すものではなく、専門家に見てもらう理由になるサインです。気になる症状は自己判断せず、かかりつけの小児科や地域の保健センターに相談してください。夜間・休日に判断に迷うときは、全国共通の電話相談窓口#8000(こども医療でんわ相談)で小児科医や看護師に相談できます。
家庭でできること
「歩く練習」をさせるより、自分で立ち上がりたくなる環境を作るほうが効果的です。
- 床で自由に動ける時間を確保する——サークルや椅子の中ではなく、つかまれる家具のある場所で。1日のうちどれくらい床で過ごしているか、一度振り返ってみると発見があります
- 室内は裸足で——足裏の感覚が使えるほうが安定します。滑りやすい靴下は、歩き始めの時期はかえって危険です
- 伝い歩きのコースを作る——ソファとローテーブルを、赤ちゃんが一歩踏み出せばつかめる程度に離して置くと、自然に手を離す練習になります。角にはクッション材を
- お気に入りのおもちゃを少し先に置く——「取りたい」が一歩を引き出します。手渡してしまうと、その機会が消えます
- 手を持つときは低い位置で——両手を高く引き上げて歩かせると、赤ちゃんは自分でバランスを取らずに済んでしまいます。引っ張る力で肘が抜ける肘内障(ちゅうないしょう)にもつながるため、脇や腰を軽く支えるほうが安全です
靴が必要になるのは、外を自分で歩き始めてからです。室内用に急いで用意する必要はありません(ファーストシューズの比較でサイズ選びをまとめています)。立ち上がるようになると転倒や転落の危険も変わるので、赤ちゃんの家庭内 安全対策も見直しどきです。
やりがちな失敗・注意点
1. 歩行器で歩き始めを早めようとする
座って足で床を蹴る歩行器は、歩く練習の道具ではありません。米国小児科学会は、歩行器に発達上の利点はなく、階段からの転落など重い事故が起きうるとして、家庭での使用を勧めていません。加えて、歩行器を使うことでかえって歩き始めが遅くなる可能性も指摘されています。使うなら、目を離さない・段差のない場所で・短時間に。歩き始めたあとに使う手押し車とは役割が違います(違いは歩行器・手押し車の比較で解説しています)。
2. 練習として長く歩かせる
手を引いて歩かせる時間を増やしても、歩き出しは早まりません。赤ちゃんが自分で重心を移す経験のほうが必要です。嫌がったらすぐやめてください。
3. 同じ月齢の子と比べる
SNSで見る「◯か月で歩きました」は、早い側の記録が集まりやすいものです。比べるならその子の1か月前と。つかまり立ちが伝い歩きになった、立っていられる秒数が伸びた——それが進んでいる証拠です。
よくある質問(FAQ)
Q. 1歳3か月です。つかまり立ちも伝い歩きもできるのに、手を離しません。
A. 体の準備はできていて、あとは怖さが取れるのを待つ段階と考えられます。この時期に相談が必要になるケースは多くありません。ソファとテーブルの間隔を少し広げる、床におもちゃを置いて手を使わせるなど、手を離す時間が自然に増える工夫を。1歳6か月になっても手を離せないようなら、健診を待たずに相談してください。
Q. 早産で生まれました。目安はどう考えればいいですか。
A. 修正月齢(出産予定日から数えた月齢)で見ます。1か月半早く生まれた子が1歳3か月なら、修正では1歳1か月半です。ただし修正月齢をいつまで使うかは状態によって違うため、フォローアップ健診の担当医の判断に合わせてください。
Q. 歩き始めが遅いと、運動が苦手になりますか。
A. 健康に発達している子どもを対象とした研究では、歩き始めの月齢と、その後の運動能力・知能に意味のある関係は見られていません。歩き始めの早さで将来の運動の得意・不得意が決まるわけではないと考えてよいでしょう。
Q. ファーストシューズはいつ買えばいいですか。
A. 外で自分の足で歩き始めてからで間に合います。先に買うとサイズが合わなくなりがちです。目安は、屋外で10歩ほど続けて歩けるようになったころ。買うときは必ず両足を計測し、つま先に5〜10mmほどの余裕があるものを選びます。
Q. 1歳6か月健診まで待つべきですか。それとも今相談していいですか。
A. 今相談して構いません。健診は「そこまで待つ日」ではなく、定期的な確認の機会です。左右差や後退のサインがあるとき、あるいは不安で毎日つらいときは、それだけで相談する理由になります。かかりつけの小児科や保健センターに、いつからどこまでできているかをメモして伝えると話が早く進みます。
まとめ
1歳で歩かないことは、統計の上ではむしろ普通のことです。1歳0〜1か月で歩いている子は約半数、9割に届くのは1歳4〜5か月未満。しかも全国の傾向として、以前よりゆっくりになっています。
家庭で見るのは、つかまり立ち・伝い歩きまで来ているかと左右を同じように使えているかの2つ。この2つに問題がなければ、待つ時間として過ごして構いません。そして、1歳6か月で歩いていなければ相談する——この線だけ覚えておけば、それまでの数か月を不安で埋め尽くさずに済みます。
気になる様子が続くときや、運動以外にも気になることが重なるときは、自己判断せずにかかりつけの小児科や保健センターへ。ひとつ前の段階ははいはいをしないでつかまり立ちと腰すわりの確認方法で、歩き始めたあとの一日の過ごし方は月齢別の生活リズムでまとめています。
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