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この記事で分かること
寝返りの練習は、特別なトレーニングとしては必要ありません。回る力は、腹ばいや体をひねる日常の動きの中で自然に育っていくからです。家庭でできるのは、①腹ばい遊びの時間をつくる ②横向きの姿勢まで手伝って、最後は自分で回らせる ③目線の先におもちゃを置く、この3つのサポートくらいです。
そして寝返りで本当に大事なのは、上手にさせることより、そぶりが見えた時点で寝床の安全を作り変えること。おくるみをやめる、寝床から枕やぬいぐるみを外す、ソファに一人で寝かせない——ここが安全の分かれ目になります。
以下では、時期の目安と前ぶれのサイン、3つのサポートのやり方、寝返り返りができず夜中に泣くときの対処、相談する目安の順にまとめます。発達には大きな個人差があります。気になるときは自己判断せず、乳児健診やかかりつけの小児科で相談してください。
そもそも「寝返り」「寝返り返り」とは?
寝返りとは、あお向けの姿勢から自分の力でうつぶせになること。腰をひねり、上になった足を反対側へ振り、下になった腕を体の下から抜く——という、意外と複雑な動きの組み合わせです。
寝返り返り(ねがえりがえり)は、その逆で、うつぶせからあお向けに戻ること。多くの赤ちゃんは寝返りを先に覚え、戻る動きは数週間から1〜2か月ほど遅れて身につきます。この「行けるけれど帰れない」時期に、夜中にうつぶせのまま泣く、という悩みが起きます。
寝返りには首と背中の安定が前提になるため、順番としては首すわりのあとに来ます。まだ頭がぐらつく段階なら、首すわりの確認方法を先に見てみてください。
寝返りはいつから?月齢の目安
こども家庭庁「令和5年乳幼児身体発育調査」(2023年9月実施)によると、寝返りは生後6〜7か月未満で9割以上の赤ちゃんが「できる」とされています。前後の運動発達と並べると次のとおりです。
| 発達の項目 | 9割以上ができるようになる時期 |
|---|---|
| 首のすわり | 生後4〜5か月未満 |
| 寝返り | 生後6〜7か月未満 |
| ひとりすわり | 生後9〜10か月未満 |
出典:こども家庭庁「令和5年乳幼児身体発育調査」
ここで読み違えやすいのが、この数字は「平均」ではなく「9割が到達する時期」だということ。実際に始まる時期はもっと幅広く、生後3か月台で回る子もいれば、7か月を過ぎてから急にできる子もいます。
| 月齢のめやす | よく見られる様子 |
|---|---|
| 生後3〜4か月 | あお向けで足を持ち上げる、体を横に傾ける |
| 生後4〜5か月 | 横向きまで行って戻る。腰のひねりが強くなる |
| 生後5〜6か月 | 腕が抜ければうつぶせに。寝返りが成立し始める |
| 生後6〜7か月 | 寝返りが安定し、寝返り返りも出てくる |
早産で生まれた赤ちゃんは修正月齢で考えます。 修正月齢とは出産予定日を基準に数え直した月齢のことで、2か月早く生まれた子は生後7か月でも修正月齢は5か月。5か月の目安と比べます。
寝返りの前ぶれサイン
いきなり回るわけではなく、たいてい前ぶれがあります。
- あお向けで足を高く持ち上げ、手でつかむ(腹筋と股関節が育っているサイン)
- 体を左右どちらかに傾けて、横向きでキープする
- 腰から下だけ先にひねって、上半身が残る
- うつぶせにすると、ひじで体を支えて胸を持ち上げる
このサインが出たら、寝床の安全対策を先に済ませてしまうのが安心です。寝返りは「そろそろかな」と思っていた日ではなく、目を離した数十秒の間に、初めての一回が起きます。
寝返りの練習は必要?——特別な訓練はいりません
結論から言うと、寝返りをさせるための特別な訓練は必要ないとされています。回る動きは、腹ばいで首を上げる、あお向けで足を持ち上げる、といった日常の遊びの中で少しずつ育つからです。練習した子が早く回る、しなかった子が遅れる、という単純な関係でもありません。
そのうえで、家庭でできるサポートは次の3つです。いずれも「回してあげる」のではなく、回りたくなる状況を作るのがコツです。
サポート1:起きている時間に腹ばい遊びを入れる
腹ばい遊び(タミータイム) とは、赤ちゃんが起きていて機嫌のよいときに、見守りながらうつぶせで過ごす時間のこと。首・肩・背中・体幹の筋肉を使うので、寝返りに必要な力がまとめて育ちます。
米国小児科学会(AAP)は、退院した日から1日2〜3回・1回3〜5分程度で始め、生後7週ごろまでに1日合計15〜30分を目安に増やしていくことをすすめています(出典:HealthyChildren.org「Back to Sleep, Tummy to Play」)。
守ってほしいのは3つ。授乳直後を避ける・目を離さない・そのまま寝かせない。腹ばいの最中に寝てしまったら、そっとあお向けに戻してください。嫌がって泣くなら、そこで切り上げて大丈夫です。1回1分でも、回数を重ねるほうが力になります。
サポート2:横向きまで手伝って、最後は自分で回らせる
赤ちゃんの腰から下を軽く支えて横向きの姿勢まで持っていき、そこで手を止めます。最後のひとひねりは、必ず本人にやらせてください。ここを大人が回してしまうと、「自分の力で体を動かした」という感覚が育ちません。
もうひとつのつまずきどころが、下になった腕が体の下に挟まってしまうこと。うつぶせになれても腕が抜けず、苦しくて泣く子は多いです。そのときは腕をそっと引き出して助けてあげてかまいません。腕を抜く動きも、繰り返すうちに自分でできるようになります。
サポート3:目線の先におもちゃを置く
回りたい理由を作ってあげる方法です。横向きになったとき、顔の向いた先の少し遠くに、音の鳴るおもちゃや大人の顔を置きます。 手を伸ばそうとする動きが、そのまま体をひねる動きになります。
赤ちゃんが最も見たいのは、たいていおもちゃではなく大人の顔です。名前を呼びながら床に寝転がるだけでも、十分な誘い水になります。
寝返りのそぶりが見えたら変える3つのこと
ここからが、この時期のいちばん大事な話です。寝返りは、睡眠環境の安全基準が切り替わるタイミングでもあります。回れるようになってからでは遅いものもあるので、前ぶれの段階で手を打っておきます。
1. おくるみ・スワドルをやめる
AAPは、赤ちゃんが寝返りをしようとするそぶりを見せたら、おくるみの使用をやめるようすすめています。腕を包まれたままうつぶせになると、自分で顔を上げたり体勢を変えたりできず、危険が大きくなるためです(目安は生後3〜4か月ごろですが、それより早いこともあります)。
寒さが心配で布団をかけたくなる時期ですが、掛け布団は顔にかぶるリスクがあるので、腕の動きを妨げないスリーパーに切り替えるのが一般的です。切り替え先の選び方はベビースリーパーの比較、おくるみ自体の卒業時期はおくるみ・スワドルの比較でまとめています。
2. 寝床を「硬く、平らに、何も置かない」に戻す
消費者庁は就寝時の窒息事故を防ぐため、敷布団やマットレスは硬めのものを使う/掛け布団は子どもが払いのけられる軽いものにする/1歳になるまではあお向けに寝かせることを呼びかけています(出典:消費者庁「就寝時の窒息事故に注意しましょう」)。
AAPも同じく、枕・クッション・ぬいぐるみ・ベッドバンパーなど、やわらかいものを寝床に置かないようすすめています。うつぶせになる可能性が出てきた以上、「顔が埋もれるものが周りにない」状態が最大の備えです。
頭の形が気になって使っていたベビー枕なども、寝返りが始まったら使用の可否を製品の表示で確認してください(ベビー枕の比較でも対象月齢に触れています)。
3. 転落対策を前倒しする
大人用ベッド、ソファ、おむつ替え台に一人で寝かせない。 おむつ替えの途中でティッシュを取りに行く、その数秒が事故の典型です。家全体の備えは赤ちゃんの家庭内 安全対策にまとめています。
「寝返り防止クッション」は使っていい?
寝返り防止クッションやスリープポジショナー(体の両側に置いて姿勢を固定する用品)は、睡眠中には使わないほうが安全とされています。
米国のFDA(食品医薬品局)とCPSC(消費者製品安全委員会)は、この種の製品に関連して12件の乳児死亡例が報告されたことを受け、使用しないよう呼びかけています。多くは横向きからうつぶせになって窒息した事例でした。SIDS(乳幼児突然死症候群)の予防や頭の形の改善をうたう製品もありますが、それを裏づける医学的な根拠はないとされています(出典:FDA「Recommendations for Parents/Caregivers About the Use of Baby Products」)。
寝返りを止めるより、回ってしまっても危なくない寝床にしておくほうが、考え方として理にかなっています。
寝返り返りができず、夜中に泣くときの対処
夜中にうつぶせになって泣く、戻してもまた回る、それが一晩に何度も——この時期、多くの家庭がぶつかる消耗の大きい局面です。
まず知っておきたい原則があります。 AAPは、あお向けからうつぶせ、うつぶせからあお向けの両方向に自分で寝返りできるようになった赤ちゃんは、寝ている間にわざわざあお向けへ戻さなくてよいとしています(寝かせ始めの姿勢は1歳まであお向けが基本です)。逆に言えば、まだ片方向しかできないうちは、気づいたらあお向けに戻すのが安心ということになります。
そのうえで、現実的な対処は次のとおりです。
- 日中に「戻る動き」を練習する……うつぶせの状態から、腰を少し持ち上げて片側へ傾け、あお向けに戻るきっかけだけ作ってあげます。最後は自分で。夜の回数は、これができるようになると自然に減っていきます
- 腕が抜けなくて泣いているだけのことも多い……戻してあげる前に、下敷きになった腕を抜くだけで落ち着くか試してみてください
- 寝床の安全を先に整える……何度も戻すのが難しい夜のために、周りにやわらかいものがない状態を作っておきます
- 寝かしつけを頑張りすぎない……この時期の夜間覚醒は発達が進んでいるサインでもあり、多くは数週間から1〜2か月で落ち着きます。夜の対応を交代する、日中に少しでも寝る、といった消耗を減らす工夫のほうが優先度は高いです
見守りが不安なときの補助としてベビーセンサーを使う家庭もありますが、あくまで補助であって、寝床の安全対策の代わりにはなりません。夜泣き全般の考え方は夜泣き・寝かしつけのコツもあわせてどうぞ。
寝返りしない・遅いと感じたときの目安
生後5〜6か月で寝返りをしていなくても、それだけで心配する必要はありません。寝返りをほとんどしないまま、ずりばいやおすわりに進む赤ちゃんもいます。 うつぶせが好きでない子は遅くなりやすい、ともよく言われます。
ただし、次のようなときは次の健診を待たずに小児科や保健センターで相談してください。
- 生後6か月を過ぎても、体をひねる・横を向くといった前ぶれがまったく見られない
- 手足がだらんとしている、または極端に硬い・反り返りが強い
- 左右差がある(片側にしか寝返りしない、片方の手足だけ動きが少ない)
- 一度できていたことが、できなくなった
- 目が合わない、音に反応しない
このうち「左右差」と「できていたことができなくなった」は、月齢に関係なく早めに相談したいサインです。
これは相談を考える目安であって、診断ではありません。当てはまっても問題がないことは多くありますし、当てはまらなくても気になるなら相談して構いません。
やりがちな失敗・注意点
1. 体をつかんで回してあげるのを繰り返す……手伝うのは横向きまで。最後のひとひねりを代わりにやってしまうと、練習になりません。
2. 寝返りが始まったのに、おくるみを使い続ける……腕が固定された状態でうつぶせになるのは、この時期でもっとも避けたい状況です。そぶりが見えた時点で切り替えを。
3. 「まだ動かない」を前提に目を離す……初めての寝返りは予告なく来ます。ソファ・大人用ベッド・おむつ替え台に一人にしないでください。
4. 寝返り防止クッションで固定する……回れないようにするより、回っても安全な寝床にするのが先です。
5. 月齢だけを見て焦り、毎日「できたか」を確かめる……9割が到達するのは生後6〜7か月未満で、そこに至る道すじは赤ちゃんごとに違います。日課の試験になると、赤ちゃんも大人もしんどくなります。比べる相手は、先月のわが子で十分です。
よくある質問(FAQ)
Q. 生後6か月ですが、まだ寝返りをしません。
A. 前ぶれ(体を横に傾ける、足を持ち上げる、腰をひねる)が見られているなら、もう少し待って大丈夫なことが多いです。前ぶれがまったくない場合や、手足の力の入り方が気になる場合は、健診を待たずに相談してください。
Q. 練習させれば、早く寝返りできるようになりますか。
A. 特別な訓練で早まるとは考えられていません。腹ばい遊びは首・背中の力を育てるので結果的に助けになりますが、「早く回らせるため」ではなく「体を使う時間を作るため」と考えるほうが気楽です。
Q. うつぶせのまま寝てしまいます。戻すべきですか。
A. 両方向に自分で寝返りできる段階になっていれば、寝ている姿勢をそのままにしておいてよいとされています。まだ片方向しかできないうちは、気づいたらあお向けに戻してください。いずれの場合も、寝かせ始めはあお向け、寝床には何も置かない、が基本です。
Q. 寝返りが激しくて、夜中に布団から出てしまいます。
A. この時期は掛け布団をかけ直してもすぐ出てしまいます。かけ直しを繰り返すより、スリーパーのように体に着せるもので調整するほうが現実的です。動く範囲が広がるので、寝床の周囲に硬いものや落下する段差がないかも見直してください。
Q. 片方向にしか寝返りしません。向き癖と関係ありますか。
A. 得意な向きから先にできるようになるのはよくあることです。ただし、いつも同じ方向ばかりで反対側にまったく動かない状態が続くときは、健診で相談を。頭の形が気になる場合の考え方はベビー枕の比較でも触れています。
まとめ
寝返りの練習は、特別な訓練としては必要ありません。腹ばい遊びで体を使う時間をつくり、横向きまで手伝って最後は自分で回らせ、目線の先におもちゃを置く。家庭でできるのは、この程度で十分です。
それより優先したいのが、そぶりが見えた時点からの寝床の作り替え。おくるみをやめる、硬く平らな寝床にして枕やぬいぐるみを置かない、ソファや大人用ベッドに一人で寝かせない。この3つが、いちばん効く備えです。
寝返り返りができず夜中に泣く時期は確かに大変ですが、多くは数週間から1〜2か月で落ち着きます。前ぶれがまったく出ない、左右差が大きい、できていたことができなくなった——こうしたときは、自己判断せず小児科や健診で相談してください。
ひとつ前の段階の確認は首すわりの確認方法、この時期の生活の組み立ては月齢別の生活リズムもあわせてどうぞ。
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