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この記事で分かること
はいはいをしないでつかまり立ちに進む赤ちゃんは、珍しくありません。 移動の形は個人差がとても大きく、はいはいを飛ばして立ち上がる子も、おしりで進む子もいます。
見るべきなのは「はいはいをしたかどうか」ではなく、次の2つです。
- 何らかの方法で自分から移動しているか(ずりばい、おしり歩き、転がり移動でもよい)
- 体の左右を同じように使えているか(片側の手足だけ使っていないか)
この2つができていれば、はいはいの形や順番が周りと違っても、多くの場合は個性の範囲です。この記事では、はいはい・つかまり立ちの時期の目安、飛ばしても大丈夫と言える根拠、逆に相談したほうがよいサイン、そして家庭でできることを整理します。首すわりからの流れは首すわりの確認方法、寝返りの練習、腰すわりの確認方法でも扱っています。
「はいはい」と呼ばれる動きは1つではない
「はいはい」という言葉は、実際にはかなり違う動きをまとめて指しています。まず、そこを分けて考えると不安が減ります。
| 呼び方 | どんな動き | よく見られる時期の目安 |
|---|---|---|
| ずりばい | おなかを床につけたまま、腕で引き寄せるように進む | 生後6〜8か月ごろ |
| 四つばい(一般的な「はいはい」) | 手と膝を床につけ、おなかを浮かせて進む | 生後8〜10か月ごろ |
| 高ばい(くまさん歩き) | 膝を浮かせ、手と足の裏で進む | 生後10か月〜1歳ごろ |
| シャフリング(いざりばい) | 座ったまま、おしりで前に進む | 生後7か月〜1歳ごろ |
※時期はあくまで一般的な目安で、個人差が大きい部分です。
つまり「うちの子ははいはいをしない」と言うとき、実際にはずりばいで家中を移動していたり、おしりで進んでいたりすることがよくあります。移動しているなら、それはもう「自分で動く力」がついているということです。四つばいの形にこだわる必要はありません。
はいはい・つかまり立ちはいつから?
こども家庭庁「令和5年乳幼児身体発育調査」(2023年実施・2024年12月公表)では、運動機能ができるようになる時期が調べられています。9割以上の赤ちゃんが「できる」と回答された月齢は次のとおりです。
| 動き | 9割以上ができるようになる月齢 |
|---|---|
| 首のすわり | 生後4〜5か月未満 |
| 寝返り | 生後6〜7か月未満 |
| ひとりすわり | 生後9〜10か月未満 |
| はいはい | 生後10〜11か月未満 |
| つかまり立ち | 生後11〜12か月未満 |
ここで大事なのは、この数字は「9割が到達する月齢」であって、「そこまでにできないと遅い」という線引きではないということです。はいはいなら、生後8か月で始まる子もいれば、10か月を過ぎてから急に動き出す子もいて、どちらも珍しいことではありません。
なお、ひとり歩きについては、令和5年の調査では9割に届く月齢が平成22年の前回調査より遅くなったと報告されています。アメリカ小児科学会の解説でも、最初の一歩は1歳の誕生日ごろが多いものの、それより早い子も遅い子もいるのが普通、とされています。1歳になった時点で歩いていなくても、それ自体で慌てる必要はありません。
はいはいをしないでつかまり立ちに進んでも大丈夫?
結論から言うと、それだけで発達の問題を心配する根拠にはなりません。理由が2つあります。
理由1:発達の目安リストから「はいはい」が外れた
アメリカでは2022年に、CDC(米国疾病予防管理センター)とアメリカ小児科学会が、乳幼児の発達を見守るための目安リストを見直しました。このとき、それまで生後9か月の項目に入っていた「はいはい」が、目安から外されています(Zubler ら、Pediatrics誌 2022年)。
外された理由は、はいはいが「できない子が多いから」ではありません。逆で、
- おなかをつけて進む、手と膝で進む、おしりで進む——どれも「はいはい」と呼ばれていて定義が定まらない
- 始まる時期の個人差が大きすぎる
- 「何か月までに何割ができる」という基準になるデータが乏しい
という理由からです。見直し後の目安は「その月齢の子の75%以上ができること」で揃えられており、はいはいはその条件を満たさなかった、ということになります。
つまり、はいはいは発達の必須の通過点というより、多くの子が通る道の1つという位置づけに変わっています。飛ばす子がいるのは想定内なのです。
理由2:小児科学会も「形」より「左右差」を見ている
アメリカ小児科学会の解説(HealthyChildren.org「Movement Milestones: 8 to 12 Months」)では、おしりで進んだりおなかで滑るように進んだりする赤ちゃんもいるとしたうえで、両方の腕と脚を同じように使えていれば心配はいらないという趣旨が示されています。
見るポイントは形ではなく、左右が対等に働いているか。ここが判断の軸になります。
逆に、気にかけたいサイン
「多くは個性の範囲」と言っても、まったく見なくていいわけではありません。次のような様子があるときは、健診を待たずにかかりつけの小児科に伝えてください。
- 生後9か月になっても、支えなしで座っていられない(アメリカ小児科学会が「小児科医に伝えて」と挙げている目安)
- いつも体の片側だけを使う(片手しか伸ばさない、片脚だけで蹴るなど左右差がはっきりしている)
- 手足の力が極端に弱い、または突っ張って固い
- 移動する手段がまったくない(寝返りでもずりばいでも、自分から場所を変えようとしない)
- できていた動きができなくなった
- 目が合いにくい、名前を呼んでも反応が乏しいなど、運動以外の面でも気になることが重なる
こうしたサインは「異常の証拠」ではなく、早めに専門家に見てもらったほうが安心な材料です。判断を自分だけで抱えず、小児科や自治体の保健センターに相談してください。多くの自治体には9〜10か月ごろの乳児健康診査があり、移動や立ち上がりの様子を見てもらえます(実施時期や内容は自治体によって異なります)。
「シャフリングベビー(いざりばい)」とは
はいはいをしない子のなかでも、特徴がはっきりしているのがシャフリングベビーです。座ったままおしりをずらして移動するタイプで、日本では「いざりっ子」とも呼ばれます。
大阪小児科医会の解説では、シャフリングベビーの特徴として、うつぶせの姿勢を嫌がる、寝返りもゆっくり、脇を抱えて持ち上げたときや床に降ろそうとしたときに脚を曲げたままで突っ張らない、といった点が挙げられています。歩き始めは1歳6か月から2歳ごろと遅れる傾向がありますが、ほとんどはその後正常に発達し、歩き出せば脚の成長も追いついていくとされています。
ただし同じ解説では、脚を突っ張らないことに加えて、①ミルクの飲みが悪く泣き方も弱い、②首のすわりが悪く抱っこするとぐらぐらする、③表情の発達が乏しく言葉の理解も遅い、④手指の発達が遅い——といった様子が見られる場合は、念のため小児科医に相談するようすすめられています。
家庭でできることは「練習」より「床の時間」
はいはいやつかまり立ちは、大人が手を取って教え込むものではありません。できるのは、赤ちゃんが自分で動きたくなる状況を作ることです。やることは次の4つで、特別な道具はいりません。
1. 起きている時間の「床にいる時間」を増やす
ベビーラック、バウンサー、抱っこひも、チャイルドシートの中では、赤ちゃんは自分の体重を支える練習ができません。機嫌のよい時間はできるだけ広い床に降ろすのが、いちばん確実なサポートです。硬すぎず滑りにくい床が安心なので、フローリングならジョイントマットなどで滑りと衝撃を和らげておくとよいでしょう。
2. 腹ばい遊び(タミータイム)を続ける
うつぶせで遊ぶ時間は、はいはいに必要な肩・腕・体幹の力を育てます。アメリカ小児科学会は、赤ちゃんが起きていて大人が見ている間に1日合計1時間程度を目安に挙げています(1回3〜5分から始め、少しずつ伸ばす形で大丈夫です)。腹ばいを嫌がる場合の工夫は向き癖・頭の形の記事でも触れています。
3. おもちゃを「あと少し届かない場所」に置く
手を伸ばせば触れる位置ではなく、少し体を動かせば届く位置に置くと、赤ちゃんは自分から移動しようとします。取れずに泣き出したらすぐ渡してあげてかまいません。狙いは達成させることではなく、動こうとする気持ちを引き出すことです。
4. つかまれる高さの家具を用意する
つかまり立ちには、手をかけられる安定した高さが必要です。ローテーブル、ソファ、しっかりした収納ボックスなど、体重をかけても倒れないものを選んでください。逆に、キャスター付きのワゴンやカラーボックスの上段など、引っ張ると動く・倒れるものは近くから外しておきます。
一方で、大人が手を持って歩かせる練習を毎日させたり、無理に立たせ続けたりする必要はありません。発達は赤ちゃん自身のペースで進みます。
歩行器やジャンパーで練習させたほうがいい?
練習のために歩行器を使う必要はありません。
アメリカ小児科学会は、車輪のついた乳児用歩行器について使わないよう強く求めています(HealthyChildren.org「Baby Walkers: A Dangerous Choice」)。歩行器に乗ると思わぬスピードが出て、階段からの転落や、ふだんは届かない高さの物に手が届いてしまう事故につながるためです。同学会は、歩行器の事故の多くは大人がそばで見ている最中に起きているとして、大人が見ていれば安全に使えるものではないという立場をとっており、車輪付き歩行器の製造・販売の禁止を求めています。日本でも、こども家庭庁や消費者庁が乳幼児の転落事故への注意を呼びかけており、階段には転落防止の柵をつけ、ロックをかけることがすすめられています。
歩行器に「歩けるようになるのを早める効果がある」という位置づけもありません。同学会は、むしろ歩行器を使うと歩き始めがかえって遅くなることがあるとしています。体を動かせる場所を用意したいなら、車輪がなくその場で遊ぶタイプの遊具(据え置き型のアクティビティセンター)のほうが安全とされています。あわせて階段にはベビーゲートを、特に階段の上には階段用のゲートを先に設置しておいてください。
つかまり立ちが始まったら、家の中で変える5つのこと
はいはいの形をどう心配するかより、立ち上がった瞬間に家の中の危険が一段増えることのほうが、実は緊急度が高い話です。次の5つは、つかまり立ちのそぶりが見えた時点で先回りしておくと安心です。
- ベビーベッドの床板をいちばん低い位置に下げる——立ち上がって柵を越える事故を防ぐためです。柵は常に上げた状態で使います
- 手が届く高さが一気に上がることを前提に置き直す——立ち上がれば、ローテーブルの上はもちろん、ダイニングテーブルの縁に置いた物にも手が伸びます。たばこ、ボタン電池、薬、小さな部品は、赤ちゃんが立った状態でも届かない場所へ移してください(消費者庁も、たばこやボタン電池の誤飲防止のため子どもの手の届かない場所に置くよう呼びかけています)
- テーブルクロス・コード類を外す——引っ張ってつかまろうとして、上の物ごと落ちてくることがあります
- 家具の転倒防止をする——カラーボックスやテレビ台は、つかまり立ちの支えにされます。壁面固定や転倒防止ベルトで留めておきます
- 階段・段差にゲートをつける——はいはいやずりばいで移動を始めた時点(早ければ生後6〜7か月)で必要になります
部屋ごとの点検は赤ちゃんの家庭内 安全対策にチェックリストがあります。
やりがちな失敗・注意点
1. 「はいはいをさせないと歩けない」と思い込む
はいはいを飛ばして歩いた子が、その後の運動発達で不利になるという根拠は示されていません。前述のとおり、はいはいは発達の目安リストからも外されました。順番より、自分で移動しているかどうかを見てください。
2. 月齢だけを他の子と比べる
同じ月齢でも、体格・気質・家の間取り(動ける床面積)によって進み方は変わります。その子の1か月前と比べて何かできることが増えているかのほうが、はるかに参考になります。
3. 立てるようになった喜びで、寝床の見直しを後回しにする
ベビーベッドの床板を下げる、寝床にクッション類を置かないといった見直しは、立ち上がってからでは間に合わないことがあります。つかまり立ちの「そぶり」の段階で済ませておくのが安全です。
4. 靴を早く履かせてしまう
つかまり立ちの段階では、室内は裸足のほうが足裏の感覚を使えて安定します。靴が必要になるのは、外を自分で歩き始めてからです。
よくある質問(FAQ)
Q. はいはいをまったくせず、つかまり立ちから歩き始めました。あとから練習させるべきですか?
A. あとから四つばいを練習させる必要はありません。すでに次の段階の移動手段を手に入れているためです。遊びのなかでトンネルをくぐる、坂を上るなどの動きが入れば、それで十分に体は使われます。
Q. ずりばいのまま、生後10か月になっても四つばいになりません。
A. ずりばいも立派な移動です。おなかを浮かせられるかどうかは、腹ばいで遊ぶ時間の長さによっても変わります。移動できていて左右差がないなら、そのまま様子を見て、次の健診で気になる点として伝えれば十分なことが多いです。
Q. つかまり立ちはできるのに、座る姿勢に戻れず泣きます。
A. 立つ動きを先に覚え、降り方を知らない時期によくあります。降り方を教えるほうが早いので、片方の膝を曲げてゆっくりおしりを下ろす動きを、体を支えながら何度か一緒にやってみてください。数日から数週間で自分で降りられるようになる子が多いです。
Q. つかまり立ちで転んで頭を打ちました。受診の目安は?
A. 意識がはっきりしない、けいれん、繰り返す嘔吐、目線が合わない、いつもと様子が違う、出血が止まらないといった場合は、すぐに受診してください。判断に迷うときは自己判断せず、かかりつけの小児科か、#8000(こども医療でんわ相談。夜間・休日に小児科医や看護師へ電話で相談できる、全国共通の窓口)に連絡を。打った直後は元気でも、しばらくはいつもと変わりないかを見てあげると安心です。
Q. 1歳を過ぎましたが、まだつかまり立ちをしません。
A. 立ち上がる意欲は個人差が大きい部分ですが、1歳を過ぎて立とうとするそぶりが見えない場合は、健診を待たずに小児科に伝えておくとよいでしょう。特に、座る姿勢が安定していない、左右差がある、脚を突っ張らないといった様子が重なるときは、早めの相談をおすすめします。
まとめ
はいはいをしないでつかまり立ちに進むこと自体は、発達の問題を示すものではありません。移動の形は赤ちゃんによって幅が大きく、そのために発達の目安リストからも「はいはい」の項目が外されたほどです。
家庭で見るべきなのは、自分から移動しているかと左右を同じように使えているかの2つ。そして、周りの子と見比べる時間があるなら、立ち上がったあとの部屋の安全対策に回したほうが確実に役に立ちます。
気になる様子が続くとき、あるいは運動以外にも気になることが重なるときは、自己判断せずにかかりつけの小児科や保健センターに相談してください。ひとつ前の段階が気になる場合は腰すわりの確認方法を、この時期の1日の過ごし方は月齢別の生活リズムもあわせてどうぞ。
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