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この記事で分かること
おしゃぶりのやめさせ方で迷ったら、寝るときは最後に回して構いません。 外す順番は、①起きている時間 → ②ぐずったとき → ③昼寝 → ④夜の寝入り、の4段階です。いちばん手放しにくい「寝入りのおしゃぶり」から取りかかると、夜中に何度も泣いて起き、親子とも消耗して途中で戻す——という失敗になりやすいからです。
時期の目安ははっきりしています。日本小児科学会と日本小児歯科学会の医師でつくる「小児科と小児歯科の保健検討委員会」は、言葉を覚える1歳過ぎからは常時使用をやめ、遅くとも2歳半までに使用を中止することをすすめています(出典:小児科と小児歯科の保健検討委員会「おしゃぶりについての考え方」平成17年1月12日)。
この記事では、4段階の具体的な進め方、年齢別に変わる作戦、夜中に泣いて起きたときの対応、そして歯並び・言葉・中耳炎で心配されることの整理までをまとめます。
| いまの状態 | 次にやること |
|---|---|
| 日中もくわえっぱなし | ホルダーを外し、見えない場所にしまう。退屈のぐずりは遊びで置きかえる |
| 泣くとすぐ口に入れている | まず抱っこ・声かけ・気そらしを試し、それでも収まらないときだけにする |
| 昼寝と夜だけになった | 昼寝から先に外す。夜はそのまま残してよい |
| 夜の寝入りだけ残った | 先に入眠の手順(絵本→暗くする→トントン)を1〜2週間かけて作ってから外す |
おしゃぶりはいつまで?やめる時期の目安
前述の委員会文書は、おしゃぶりを使う場合の留意点を5つ挙げています。時期に関わるのは次の3つです。1歳過ぎになったらホルダーを外して常時使用をやめる。遅くとも2歳半までに使用を中止する。4歳以降も取れない場合は、情緒的な面を考慮してかかりつけの小児科医に相談する。
かみ合わせについても、具体的に書かれています。おしゃぶりを使っている子は上顎前突(じょうがくぜんとつ=いわゆる出っ歯)、開咬(かいこう)、乳臼歯交叉咬合(にゅうきゅうしこうさこうごう)の割合が高い。ただし「この傾向は1歳6か月、2歳でも見られるが、止めると噛み合わせの異常は改善しやすい」。一方で「乳臼歯が生え揃う2歳半、さらに3歳過ぎまで使用していると噛み合わせの異常が残ってしまう」としています。
用語を補足します。開咬は、奥歯を噛み合わせても前歯の上下にすき間が残り、前歯で噛み切れない状態です。乳臼歯交叉咬合は、奥歯の上下が横方向にずれて噛み合っている状態を指します。どちらも、吸う力が毎日同じ方向に歯を押し続けることで起こります。
つまり、2歳半という数字は「そこを過ぎると元に戻りにくくなる境目」として出てきたものです。1歳半でまだ夜だけ使っている、という状態は焦る段階ではありません。逆に、3歳が近づいてきたら早めに動いたほうがよい、ということになります。
寝るときのおしゃぶりが最後まで残る理由
寝入りのおしゃぶりだけが手強いのには理由があります。子どもは、眠りに入るときの状況(暗さ、音、抱かれ方、口の中のもの)とセットで「眠り方」を覚えます。これを入眠時の関連づけといいます。赤ちゃんは夜中に何度も浅い眠りに浮上しますが、そのとき寝入ったときと同じ状況がそろっていないと、目が覚めて泣いて呼ぶことになります。
だから、寝入りのおしゃぶりを最初に取り上げると、夜中の泣きが一気に増えます。日中の使用を減らすほうがはるかに負担が軽く、しかも日中の使用こそ、発語の機会が減る・親が「なぜ泣いているのか」を考えなくなるといった、委員会文書が欠点として挙げている部分です。順番として、日中が先で夜が後、というのは理にかなっています。
医学的にも、寝入りだけに絞るやり方には後押しがあります。フィンランドで行われた比較試験では、保健師が保護者におしゃぶりの使用制限を指導したグループで、急性中耳炎の発症が29%少なかったと報告されています。研究者は、眠りに入るときだけに使用を限ることが中耳炎の予防に有効だったと結論づけています(出典:Niemelä M, et al. “Pacifier as a Risk Factor for Acute Otitis Media” Pediatrics 2000;106(3):483-488)。
なお、低月齢のうちは事情が違います。米国小児科学会は、乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクを下げるために、昼寝と就寝のときにおしゃぶりを与えることをすすめています(出典:HealthyChildren.org「Pacifiers and Thumb Sucking」)。SIDSは生後1年未満、とくに生まれて半年ごろまでに多いとされており、この時期は無理にやめる場面ではありません。
やめさせ方の4段階
英国の地域保健サービスが示している手順は、おしゃぶりを使う場面を少しずつ狭めていき、最後に本人の納得で手放すという流れです(出典:Derbyshire Family Health Service「Stopping use of a dummy and/or bottle」)。これを日本の生活に合わせて4段階に整理すると、次のようになります。
段階1:起きている時間から外す
まずホルダー(服に留めるひも)を外し、おしゃぶりを子どもの視界に置かないようにします。見えていると、必要がなくても要求が出るためです。退屈でぐずるときは、おしゃぶりではなく遊びや外気浴で気をそらします。子どもが自分で口から出したら、そのタイミングで受け取って片づけ、「自分で出せたね」と声をかけます。目安は1〜2週間です。
段階2:泣いたときの反射的な使用をやめる
泣いた瞬間に口へ入れるのを一度やめ、抱っこ・声かけ・場所を変えるを先に試します。それでも収まらないときの最後の手段として残す、という位置づけに変えます。ここが4段階でいちばん親の意識が変わる部分で、「なぜ泣いているのか」を考える時間が戻ってきます。目安は1〜2週間です。
段階3:昼寝から外す
夜より昼寝のほうが、外すハードルが低くなります。昼寝は眠る時間が短く、明るい部屋で生活音がある中で寝つくことが多いため、おしゃぶりとの結びつきが夜ほど強くないからです。おしゃぶりの代わりに、背中をトントンする・同じ音楽をかける・同じタオルケットを使うなど、置きかえられる合図を用意します。最初の2〜3日は寝つきが悪くなりますが、多くの場合そこを越えると落ち着きます。
段階4:夜の寝入りから外す
最後が夜です。外す前に、入眠の手順(決まった流れ)を1〜2週間かけて先に作っておくのがコツです。たとえば「お風呂→授乳やミルク→絵本1冊→部屋を暗くする→トントン」のように毎晩同じ順番にします。手順が定着してからおしゃぶりを抜くと、置きかえる先があるぶん崩れにくくなります。
このとき、お気に入りのぬいぐるみやタオル(移行対象=子どもが自分を落ち着かせるために持つ決まった物)が助けになることがあります。ただし窒息の危険があるため、1歳未満の赤ちゃんの寝床には枕・ぬいぐるみ・タオルなどを置かないでください。移行対象を使うのは1歳を過ぎてからにします。
年齢で変わる進め方
| 時期 | やること | 避けたいこと |
|---|---|---|
| 6〜11か月 | 日中の常用だけ減らす。寝入りの使用は残してよい | 急いでやめること。低月齢では利点のほうが大きい |
| 1歳〜1歳半 | ホルダーを外し常用をやめる。段階1〜2を進め、昼寝から外す | 夜の寝入りをいきなり外すこと |
| 1歳半〜2歳 | 「おしゃぶりは夜だけ」と言葉でルールにする。段階3を完了させる | 言い聞かせだけで夜も外そうとすること |
| 2歳〜2歳半 | 手放す日と手放し方(郵便で送る、生まれた赤ちゃんにあげる等)を本人と決める | 予備を1つだけ取っておくこと |
| 2歳半を過ぎている | かかりつけの小児科・小児歯科でかみ合わせを見てもらいながら進める | 一人で抱えて焦ること |
2歳を過ぎると、言葉でのやりとりが使えるようになります。日を決めて、本人にお別れの役をやってもらう方法(郵便で送る、生まれたばかりの赤ちゃんにあげる、など)が効くのはこの年齢からです。逆にこの年齢では、こっそり隠す方法はうまくいきません。納得がないまま消えると、探して泣く時間が長引きます。予備を1つ取っておくと、結局そこへ戻ることになるので、決めた日にすべて手元から離します。
うまくいかない4つのやり方
苦い物を塗る・叱る。おしゃぶりは子どもが自分を落ち着かせる手段でもあるので、落ち着く方法を用意しないまま罰で取り上げると、指しゃぶりや爪噛みなど別の癖に移ることがあります。前述の委員会文書が、4歳以降も取れない場合に情緒的な面を考慮して小児科医への相談をすすめているのも、これが気持ちの問題と結びついているためです。
生活の変化と重ねる。保育園の入園、引っ越し、下の子の誕生、旅行と同じ時期に始めると、両方うまくいかなくなります。落ち着いている時期を選び、家族全員が同じ対応をできる週に始めます。
泣かれて元に戻す。一度戻すと「泣けば返ってくる」と学習し、次はもっと粘るようになります。始める前に「戻すときは前の段階に1つ戻すだけ」と決めておくと、判断で迷いません。
代わりに哺乳瓶を持たせる。前述の英国の資料も、おしゃぶりの代わりに哺乳瓶を与えないよう注意しています。寝ながら飲み続けると虫歯のリスクが上がり、置きかえた先で同じ課題が残ります。
歯並び・言葉・中耳炎、どこまで心配すべきか
歯並びは、前述のとおり2歳ごろまでに使用を中止すれば発育とともに改善されると委員会文書は述べています。心配すべきなのは、2歳半から3歳過ぎまで続いている場合です。
言葉については、委員会文書がおしゃぶりの欠点として「ことば掛けが減る」「発語の機会が減る」を挙げています。おしゃぶりを口に入れていると声が出せない、という単純な理由です。ただし、これは「おしゃぶりを使うと必ず言葉が遅れる」という意味ではありません。実際にできる対策は、子どもが声を出している・話しかけてきたときは必ず外すことです。
中耳炎は、前述のフィンランドの比較試験で発症の差が示されていますが、生活の中の要因は多く、おしゃぶりだけで決まるものではありません。「寝入りのときだけに絞る」という現実的な落としどころが、この点でも無理のない選択になります。
耳を痛がる、機嫌が悪く発熱がある、かみ合わせのすき間が気になる——といった場合は自己判断せず、かかりつけの小児科・小児歯科に相談してください。
よくある質問
Q1. 夜中におしゃぶりが落ちて、そのたびに泣いて起きます。
A. 月齢によって答えが変わります。生後6〜11か月なら、寝床の中におしゃぶりをいくつか置き、自分で見つけられるようにする方法があります(この月齢では、寝床に入れてよいのはおしゃぶりだけで、枕やぬいぐるみ、タオルは入れないでください)。1歳を過ぎて夜中の呼び出しが毎晩続くようなら、それは外す時期のサインです。段階3から順に進めます。
Q2. 一気にやめるのと、少しずつ減らすのはどちらがいいですか。
A. 2歳を過ぎて言葉が通じる子なら、日を決めて一気に手放す方法が向きます。1歳前後で言葉での説明が難しい時期は、段階を踏むほうが失敗しにくくなります。
Q3. おしゃぶりをやめたら指しゃぶりが始まりました。
A. よくある移り変わりです。指しゃぶりは3歳ごろまでは強く禁止しなくてよいとされているため、まずは様子を見て構いません。詳しくは指しゃぶりはいつまで大丈夫かにまとめています。
Q4. 保育園ではおしゃぶりなしで昼寝できるのに、家では欲しがります。
A. 場所と人が変われば眠り方の関連づけも変わるので、園ではなし・家では欲しがる、は同時に起こります。むしろ園でできている=おしゃぶりなしで眠れる力はあるという証拠です。家でも段階3(昼寝から外す)を進めやすい状態なので、休日の昼寝から試してみてください。
Q5. 2歳半を過ぎてしまいました。もう手遅れですか。
A. 手遅れではありません。委員会文書が2歳半を挙げているのは「かみ合わせの異常が残りやすくなる時期」であって、そこを過ぎたら改善しないという意味ではありません。ただし早いほど戻りやすいので、小児歯科でかみ合わせを見てもらいながら、この記事の段階3〜4を進めるのがよいでしょう。
まとめ
おしゃぶりのやめさせ方は、外す順番を間違えないことがほとんどすべてです。日中の使用から減らし、昼寝、最後に夜の寝入り。1歳過ぎに常用をやめ、遅くとも2歳半までに——という目安を頭に置いておけば、途中で泣かれても「いま止めているだけ」と落ち着いて構えられます。
夜の寝かしつけそのものに手を焼いている場合は、夜泣きと寝かしつけのコツ、夜間の授乳とセットで見直したい場合は断乳・卒乳の進め方もあわせてどうぞ。泣きの理由そのものを整理したいときは赤ちゃんはなぜ泣くのかも参考になります。
出典:小児科と小児歯科の保健検討委員会「おしゃぶりについての考え方」(平成17年1月12日)/Niemelä M, et al. “Pacifier as a Risk Factor for Acute Otitis Media: A Randomized, Controlled Trial of Parental Counseling” Pediatrics 2000;106(3):483-488/American Academy of Pediatrics「Pacifiers and Thumb Sucking」(HealthyChildren.org)/Derbyshire Family Health Service「Stopping use of a dummy and/or bottle」
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