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この記事で分かること
1歳半健診で言葉が出ていなくても、それだけで発達の遅れと判断されることはありません。 国の最新調査では、生後1年6〜7か月で一語以上の言葉を話すと回答された割合は91.1%。裏を返せば、1割弱の子はこの時期まだ単語が出ていないという数字です。
先に要点をまとめます。
- 1歳半健診で重視されるのは「いくつ話せるか」よりも、言葉が分かっているか(名前を呼ぶと振り向く、聞かれたものを指させる)
- 健診の中身は言葉だけではなく、身体計測・内科診察・歯科診察・生活の相談まで含む総合的な場
- 「もう少し様子を見ましょう」は診断ではなく、次の相談につながる枠に入るという意味
この記事では、国の調査でわかる発語の実際の時期、健診で本当に見られているポイント、当日の流れと持ち物、そして指摘があったときにその後どう進むのかを整理します。
1歳半健診で言葉が出ない子はどのくらいいる?
こども家庭庁「令和5年乳幼児身体発育調査」(2023年9月実施・2024年12月公表)は、保護者への調査として「一語以上の言葉を話すか」の割合を月齢別に示しています。ここでいう一語とは、実際にその物を指して発音される単語のことです。
| 月齢 | 一語以上話すと回答された割合 |
|---|---|
| 1歳0〜1か月未満 | 36.5% |
| 1歳1〜2か月未満 | 51.3% |
| 1歳2〜3か月未満 | 61.7% |
| 1歳3〜4か月未満 | 69.6% |
| 1歳4〜5か月未満 | 80.6% |
| 1歳5〜6か月未満 | 86.9% |
| 1歳6〜7か月未満 | 91.1% |
| 1歳7〜8か月未満 | 92.4% |
| 1歳8〜9か月未満 | 93.2% |
| 1歳9〜10か月未満 | 97.1% |
注目したいのは、1歳0か月では36.5%、つまり1歳の誕生日に単語が出ている子は3人に1人程度という点です。そこから半年で9割まで一気に増えます。1歳半という時期は、ちょうど坂を上りきったあたり。数週間の差で「まだの子」に入ることは十分あり得ます。
さらに同じ調査では、平成22年の前回調査と比べて、特に生後1年前後で一語以上話すと回答された割合は低くなっていると報告されています。以前の目安より、いまの子どもたちのほうがややゆっくりという結果です。周囲と比べて焦る前に、この点は知っておいて損がありません。
健診で先に見られているのは「話す」より「分かる」
言葉の発達を見るとき、専門職が最初に確認するのは発語の数ではなく、言葉を受け取れているかです。話し始めるより先に理解が育つのが一般的で、この順番については「まだ話せない=わかっていない」ではありませんでも詳しく触れています。
健診の場で手がかりになるのは、次のようなサインです。
- 有意語(ゆういご)が出ているか:有意語とは、「マンマ」「ブーブー」のように、その物や人を指して意味を持って使われる言葉のこと。声は出るけれど意味と結びついていない喃語(なんご)とは区別されます
- 応答の指さしができるか:応答の指さしとは、「わんわんはどれ?」と聞かれて、絵や実物を指でさして答えるやりとりのこと。言葉が出ていなくても、これができていれば「聞いて・理解して・答える」流れが成立していると判断できます
- 名前を呼ぶと振り向くか:後ろから呼ばれて反応するかは、聞こえの確認も兼ねた項目です
- 興味を共有しようとするか:飛行機を見つけて指さし、こちらの顔を振り返る。この「一緒に見て」の動きは共同注意と呼ばれ、言葉が伸びる土台になります
指さしと言葉の関係については赤ちゃんの「指さし」と言葉の関係にまとめています。発語がまだでも、こうしたやりとりが育っていれば、それは大きな安心材料になります。
1歳半健診はいつ受ける?費用は?
1歳6か月児健康診査は、母子保健法第12条で市町村に実施が義務づけられている健診です。条文の対象は「満一歳六か月を超え満二歳に達しない幼児」。つまり1歳6か月から2歳の誕生日までの間に受けるもので、1歳6か月ちょうどで受けなければならないわけではありません。
費用は公費でまかなわれ、自己負担なしで受けられるのが一般的です(3歳児健診とともに、国が市町村へ財政措置を行っています)。実施方法は自治体によって、保健センターに集まって受ける集団健診と、かかりつけ医などで個別に受ける個別健診に分かれます。
出典:こども家庭庁「乳幼児健診について」(成育医療等分科会 資料)
当日は何をする?内容と問診項目
一般的な集団健診では、受付・問診票の確認 → 身体計測 → 歯科診察 → 内科診察 → 保健師や栄養士との相談、という流れで1〜2時間ほどかかります。
問診で聞かれる内容は、母子健康手帳の1歳6か月の記録欄とほぼ重なります。国の「乳幼児健康診査事業実践ガイド」に挙げられている項目は次のとおりです。
| 分野 | 聞かれること |
|---|---|
| 運動 | ひとり歩きをしたのはいつか |
| 言葉 | ママ、ブーブーなど意味のある言葉をいくつか話すか |
| 生活 | 自分でコップを持って水を飲めるか/哺乳瓶を使っていないか |
| 食事 | 食事や間食の時間はだいたい決まっているか |
| 歯 | 仕上げみがきをしているか/フッ化物(フッ素)を使っているか |
| 目・耳 | 極端にまぶしがったり目の動きが気になったりしないか/うしろから名前を呼んだとき振り向くか |
| 遊び | どんな遊びが好きか |
| 保護者 | 気軽に相談できる人はいるか/子育てに不安や困難を感じていないか |
出典:国立成育医療研究センター「乳幼児健康診査事業実践ガイド」
このほか、自治体によっては積み木を積む、絵を見て指さすといった簡単な課題を目の前でやってもらうことがあります。上手にできるかを採点しているというより、指示が伝わるか、大人とやりとりが成立するかを見ています。
表のいちばん下、保護者に向けた2つの質問に注目してください。健診は子どもだけを見る場ではなく、保護者の困りごとを拾う場でもあります。夜泣き、偏食、歯みがきを嫌がる、上の子との関わり——気になっていることは、この日にまとめて聞いてしまうのが得です。
持ち物は、母子健康手帳・問診票・健康保険証・乳幼児医療証・おむつと着替え・飲み物が基本。集団健診は待ち時間が長くなりがちなので、静かに遊べる小さなおもちゃがあると助かります。服は上下が分かれた、着脱しやすいものを選んでおくと計測がスムーズです。
「様子を見ましょう」と言われた後はどうなる?
その場で発達の診断がつくことはありません。健診で気になる点があった場合にたどるのは、おおむね次の流れです。
- 保健師との個別相談:家庭での様子をくわしく聞き取り、関わり方の助言を受ける
- 経過観察(後日の再確認):2〜3か月後に電話や来所で様子を確認する、2歳ごろの相談枠を案内される、など
- 心理職や言語聴覚士による発達相談:遊びの場面を通して、理解・表出・対人面のバランスを見る
- 必要に応じて専門機関へ:小児科・児童発達支援センター等での相談や支援につなぐ
大切なのは、この流れが「問題があると決まったから進む道」ではないということです。1歳半は個人差が大きい時期で、いったんフォローの枠に入り、数か月後に「問題なし」となって終わるケースは珍しくありません。支援が必要だった場合も、早く関わりが始まるほど、その子に合った伸ばし方を見つけやすくなります。
なお、言葉以外に「呼んでも振り向かないことが多い」「目が合いにくい」「以前できていたことができなくなった」「歩き方が気になる」といった点があるときは、健診を待たず、自己判断せずにかかりつけの小児科や地域の保健センターに相談してください。歩行の目安については1歳で歩かないのは遅い?にまとめています。
家庭でできること
単語を覚えさせる練習は必要ありません。研究で繰り返し示されているのは、大人と子どもの「やりとりの往復」の多さと言葉の伸びの関連です。
- 指さしに言葉で返す:犬を指したら「わんわんだね、しっぽ振ってるね」と、指した気持ちに言葉をかぶせる
- 3秒待つ:質問したあと、先回りして答えを言わない。返事を組み立てる時間を渡す
- 選ばせる:「どっちにする?」と2つ差し出すと、発語やしぐさで意思を伝える機会が生まれる
- 画面より人の声:実践ガイドでは2歳までの子どもにはテレビやDVDを見せないようにする、という指導が挙げられています。動画を全否定する必要はありませんが、言葉が育つのは応答が返ってくる相手との時間です
詳しくは赤ちゃんの言葉は「量より“やりとり”」と「赤ちゃん言葉」より効く語りかけ方で解説しています。
やりがちな失敗・注意点
1. 健診の直前に「特訓」してしまう
数日前から急に単語を言わせようとしたり、指さしを練習させたりしても、慣れない場では出ないことがほとんどです。むしろ子どもが身構えてしまい、当日ぐずる原因になります。ふだんどおりで臨むほうが、正確に見てもらえます。
2. 眠い時間帯に予約を入れる
昼寝と重なると、機嫌が悪いまま何もできずに終わりがちです。個別健診で時間を選べるなら昼寝の後を、集団健診で時間が決まっているなら当日の睡眠を少し前倒しして臨むと違います。
3. 「様子を見ましょう」で終わりにしてしまう
心配な気持ちがあるのに、その場の空気で「大丈夫です」と答えてしまう方は少なくありません。実践ガイドに示された国の調査でも、1歳6か月の保護者の25.3%が育てにくさを「いつも感じる」「時々感じる」と答えています。不安を口に出すのは、まったく特別なことではありません。 次にいつ誰に相談できるのかを、その場で確認しておきましょう。
よくある質問(FAQ)
Q. 1歳半健診は、単語がいくつ話せれば安心ですか?
A. 「何語以上なら安心」という全国共通の線引きはありません。数よりも、言われたことが分かっている様子があるか、伝えたい気持ちを指さしや身ぶりで表しているかが重視されます。数を数えて一喜一憂するより、やりとりが成立しているかを見てあげてください。
Q. 対象の期間を過ぎてしまいました。もう受けられませんか?
A. まずは自治体の母子保健担当に連絡してください。実施方法は市町村ごとに異なりますが、期間を過ぎた場合の受け方を案内してもらえることが一般的です。受けないままにするより、遅れてでも相談したほうが安心につながります。
Q. 当日ずっと泣いていて、積み木も指さしもできませんでした。
A. よくあることで、それだけで判定が決まることはありません。ふだんは家でできている、という情報は評価の材料になります。家での様子を伝え、心配が残るなら後日の相談を申し込んでおくと確実です。
Q. 二語文はいつごろから出ますか?
A. 「ワンワン きた」のように単語を2つつなげる二語文は、2歳前後から見られることが多いとされますが、幅の大きい発達です。1歳半の時点で出ていなくても、通常は気にする段階ではありません。
Q. 保育園に通っていると言葉が早いのでしょうか?
A. 集団生活の刺激が影響することはありますが、家庭で過ごす子が遅いという単純な話ではありません。園でよく話すのに家では出にくい、その逆もあります。関連があっても、それが原因とは限らない点には注意が必要です。
まとめ
1歳半健診は、テストではなく相談の場です。国の調査で1歳6〜7か月の91.1%が一語以上を話しているというのは、9割の子ができているという意味であると同時に、1割弱の子はまだ、という事実でもあります。
当日までに準備することがあるとすれば、単語の特訓ではなく、聞きたいことを3つメモしておくこと。言葉、食事、歯、寝かしつけ、なんでも構いません。医師・保健師・歯科・栄養の専門職に一度に会える機会は、そう多くありません。
そして日々の関わりで意識するのは1つだけで十分です。子どもが指をさしたら、その先を一緒に見て、言葉を返す。この往復が、話し言葉に変わっていく土台になります。
気になる様子があるときは、健診の日を待たずに、かかりつけの小児科や地域の保健センターへ相談してください。早く相談することに、デメリットはありません。
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